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第12話

「なんと、あれは橋本さんの長女ではないか?彼女、どうしてこんなところに来たのかしら?」

「ふふ、これで面白くなるぞ!」

「元々黒崎さんと結婚する相手は彼女だそうです」

「姉妹二人が黒崎さんを争うか?」

「…」

周囲の人々の噂話は、まるで寒風のように美咲を襲った。彼女の手は冷たくなり、顔色も次第に青白くなっていった。

「美咲、顔をあげて。彼らの言うことなんて気にしないで」

美咲は深呼吸をして、周りの視線を無視した。

二人がロビーに入ると、人々の視線を引きつけた。

「わあ!すごくかっこいい!」

「彼の隣にいる女の子もすごく綺麗だね!」

「完璧なカップル!」

「お似合いですね!」

「あれ、その人、橋本さんの長女じゃないか?」

「本当だ!」

「どうしてここに来たの?」

「…」

誰も美咲が結婚式に出席したとは思わなかった。

元々、真っ白なウェディングドレスを着た月影はロビーでゲストと歓談していた。しかし、どういうわけか、みんなの視線は自分に向かず、次々と入口の方へ向かっていた。人々の視線を辿っていくと、月影は美咲が本当に結婚式に来ていたことに気づいた。さらに、彼女が嫌だったのは、みんなが美咲の美しさを称賛していたことだった。その褒め言葉を耳にして、月影はますます嫉妬してしまった。彼女は嬉しそうに装って、傍に立っていた黒崎に冗談めかして言った。「お姉さん、とても綺麗ですね。でも、その男は誰ですか?まさか彼氏ですか?」

そんな話を聞いた黒崎は怒って、拳を強く握りしめた。

「橋本美咲、君はずっと僕を裏切っていたんだね!」と彼は悔しそうに思った。黒崎が怒っていたとに気づいた月影は、顔に無邪気な笑みを浮かべて言った。「たっくん、私たちも行きましょう。お姉さんに彼氏ができて本当に嬉しいです。これで彼女は私たちを許してくれるでしょう」

黒崎拓也は橋本月影の腰を抱きしめ、美咲の方に行った。

それを見た氷川は優しく美咲の手を繋いで、ロビーの真ん中に立った。

四人が向かい合って立っていた。

月影は幸せそうに微笑みながら、黒崎に寄りかかった。「お姉さん、私とたっくんの結婚式に来てくれてありがとう。私はすごく嬉しいですよ。お姉さんもきっと私たちを祝福しに来たんでしょう?」

月影の偽善的な顔を見て、美咲は思わず彼女を殴りたくなった。

月影を抱きしめていた黒崎は、美咲にこう言った。「美咲、君はとっくに他の男と関係がありました。だから、俺も罪悪感を感じる必要はなくなりました」

皮肉な言葉はまるで尖ったナイフのように美咲の心を刺した。

「恥知らずなクズ男だ!「自分が月影と関係を持ったからって、彼女も浮気していると思い込んでいた。クズ男だ!」と美咲は怒りをあらわにしながら思っていた。氷川は鋭い目で黒崎拓也を見つめた。そして、彼は二人に向かって軽蔑的に言った。「美咲が僕の妻になれたのは、黒崎さんの裏切りのおかげだ!」

その簡単な一言が、美咲の潔白を証明した。

その話を聞いて、周りの人は、黒崎拓也と橋本月影がまず美咲を裏切ったから、彼女がほかの男と結婚したことになったことがわかった。「それで、お前は何しに来たんだ?」

「それは、クズ男とビッチ女が永遠に幸せであることを祈るために」氷川は嘲笑的に言った。

「お前!」黒崎は拳を握りしめ、怒って言った。

黒崎拓也の胸に寄りかかった橋本月影は嫉妬の目で美咲を見つめていた。

彼女は「橋本美咲は他人にこんなに守られる資格がない!」と思っていた。

彼女はやっと拓也に好かれるようになったのに、皆が美咲を見下したと思っていた。でも今、別の男が彼女を好きになっていた。そして、その男は拓也よりもっと優れていて、もっとかっこいい。

「だらしない女!」黒崎は怒りを抑えきれずに美咲を罵った。

バシッ「これから、美咲をいじめると、君を殺すよ」と氷川は黒崎拓也を殴ったあと、そう言った。

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