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第11話

美咲は二階で礼服に着替えたから、氷川は一階で彼女を辛抱強く待っていたが、時々時間を確認していた。しばらく、「コツコツ」とハイヒールの音が階段で響くと、その音に目を向けた彼は、ドレスを着て優雅に階段を降りてきた美咲を見た。彼女の美しさに氷川は息を呑んだ。

彼女はハイヒールを履いて、恥ずかしそうに一歩一歩彼の方へと近づいてきた。その美しさと照れが氷川の目に入った。それは片肩のドレスで、美咲の片方の鎖骨と肩を美しく見せた。

鎖骨の上に装飾品の中には無数の小さな星がきらめいていた。

白いクリスタルのリボンが肩に纏いながら、その縁には金色のふさ飾りが飾られていた。

ドレスは美咲の体のラインにぴったりとフィットし、腰のあたりで雲のように華やかなひだを作り出し、そこから広がるスカートとなった。

星のようなダイヤモンドが散りばめられ、きらきらと輝いていた。

氷川はすぐに立ち上がり、まっすぐ彼女に向かって歩いた。

彼が一歩一歩近づいてきたのを見て、美咲は緊張してスカートを握りしめた。その緊張した姿が氷川には特別に可愛らしく見えたので、彼は「美咲、本当に美しい」と心から美咲を褒めた。

夏の大雨に洗われた青い杏のように、照れた彼女は恥ずかしそうに頭を下げて、目の前の男と目を合わせたことができなかった。

氷川は美咲の細い手をしっかりと握りしめ、「さあ、結婚式をぶち壊しに行こう」と、言った。

自分の彼氏と妹の結婚式が行われたことは、美咲にずっと悩みを抱かせていた。しかし、氷川の言葉が彼女を癒してくれた。美咲は思わず「ぷっ」と笑ってしまった

氷川は美咲のために車のドアを開け、自分は反対側から車に乗り込んだ。そして、彼は山田に「帝国ホテルへ行ってくれ」と指示した。

「はい、わかりました」山田は、なぜ帝国ホテルに行くのか理解できなかったが、好奇心を抑えながら、車を走らせてホテルに向かった。

帝国ホテル。

ここは東京で最も豪華なホテルで、多くの著名な人々がここで結婚式を挙げたことを選んだ。

今日、黒崎グループと橋本グループの結婚式もここで行われることだった。

結婚式に出席していたのは、東京の上流階級のエリートたちばかりだった。

したがって、今日ここに集まったゲストは、皆黒崎グループの顔を立てたために出席したのだった。

黒崎グループとの縁組は果たせたものの、新興の橋本グループの財力は、黒崎グループには及ばなかった。

黒崎グループとの縁談が成立したなんて、橋本グループにとってこの上ない光栄だった。

黒崎拓也と結婚した人は橋本海人の娘である限り、橋本グループに多大な利益をもたらすだろう。

だから、見捨てられた美咲を気にかける人は誰もいなかった。

ホテルの入口には高級車がずらりと並んでいた。

しかし、超高級なランボルギーニが入り口に停まると、たちまち多くの人を引き付けた。ランボルギーニと比べると、他の高級車は色あせて見えてしまった。

「えっ、東京にこんな高級車があるなんて、驚きだ!」

「この車はきっと世界限定版だろう」

「この車が誰のものか?ネットで調べて!」

「おかしいな、どうして全然情報が出てこないんだの?」

「…」

人々のざわめきの中、氷川はゆっくりと車から降りてきた。その姿を見た瞬間、女の記者たちは一斉に「わあ」と声を上げた。

「ああ…イケメン!」

「映画の主人公よりずっとかっこいいじゃん!」

「これって誰?」

「早く写真撮って!」

「…」

記者たちは狂ったように撮影し続け、シャッター音が絶え間なく響いた。氷川は山田に「撮影をやめさせろ。今日の写真が一枚でもネットに流れるのを見たくない」と命じた。

「はい、わかりました」山田はすぐに応じた。そして、彼は車から降りたボディーガードを連れて、写真を撮た記者たちを止めに行った。

多くの人々にあからさまに見られていたから、美咲の顔色はどんどん悪くなっていった。彼女の気分が落ち込んでいたことに気づいた氷川は彼女に手を差し伸べた。美咲も素直にその手を握った。

しかし、美咲が車から降り立つと、その姿を人々や記者たちは一斉にブーイングを浴びせた。

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