第10話

美咲がついに同意したのを見た氷川は気が済んだように微笑んだ。彼は服の入った袋を彼女に渡し、「今夜は隣の部屋で休んで。明日、山田が新しい服を持ってきた」と言った。

氷川の表情は毅然としており、譲った気配がなかった。もともと断りたかった美咲は、その話を聞いた後、服を持って隣の部屋に行った。

美咲が部屋を出た後、氷川はすぐに山田に電話をかけた。「山田、黒崎グループのファッションショーへの資本金を引き上げてくれ」彼の声は先ほどの美咲に対した優しい口調とはまったく異なっていた

「でも、氷川はさん。ただ昨夜資本金を注入したばかりなのですが、これから資本金を引き出ししたら、ちょっど…」

「もう一度言わせたか？」氷川の口調は全く容赦がなかった。

向こうの山田は、冷や汗をかきながら、「はい、わかりました」と何度もうなずいた！

携帯を握りしめた氷川の目の奥には怒りが満ちていた。

彼らが自分の好きな女性をいじめたなら、復讐されても自業自得だ！その夜、美咲は一晩中泣き続けた。枕元は涙でびしょ濡れになり、いつ眠りについたのかもわからなかった。

朝八時、まだ起きなかった彼女を心配した氷川颯真は、隣の部屋に入った。すると、彼は、眠っていた美咲が苦しそうに眉をひそめていたのを見つけた。美咲が橋本月影にいじめられたことを思い出すと、氷川の怒りが抑えなくなった。

彼は静かにベッドに歩み寄った。その高い影が小柄な彼女を包み込んだ。

朝になっても涙はまだ乾いていなかった。氷川は美咲のことを心配した。

強烈で独断的な息吹のせいで、美咲はゆっくりと目を覚ました。目の前にあったのは、目を細めて暗い顔で彼女を見ていた男だった。

「ああ…」彼女は思わず叫んだ。しかも布団を引っ張って、質問した、「何をしてるの？」

氷川はため息をつき、態度を和らげて、とても優しい口調で言った。「もうすぐ八時だよ。まだ起きていないから心配になって、ちょっと見に来たんだ」

そんなに遅かった？美咲は手を伸ばしてベッドサイドの携帯電話を取りに行くと、ちょうどその時、ライオンからメッセージが届いた。

届いたメッセージを見ると、美咲の顔が悪くなった。

彼女はスマホを開き、画面に示したその挑発的な言葉を見ると、すぐ返信しようと思ったが、スマホはある大きな手でひったくれらた。

空っぽとなった手を見た美咲は、氷川を仰ぎ見ていた。すると、男の細長い指はスマホで入力していた。

その時、もう一つのメッセージが届いた。

氷川はその内容を見ると、目を細めた。周りの空気も寒くようになった。

彼は返事を終えると、携帯を美咲に渡した。「ドレスに着替えて、結婚式をぶち壊しに行こう」

彼が行ったあと、美咲はそのメッセージを見た。

彼女はもともと冷たい表情をしていたが、氷川はの話を聞いたあと嬉しくなり、口元でも引き上がった。

橋本月影からのメッセージが一つがあった。彼女は「拓也が私の指に指輪をはめるのをを見るのが嫌だから、今まで来ませんの？」と尋ねてきた。

氷川は「僕が結婚式の会場に行ったら、君は後悔する」と返信した

そして、もう一つのメッセージは、黒崎拓也が送ったものだ。「美咲、あなたが来て、僕と月を祝福してくれることはほしいです。あなたは僕を五年間も愛していたのだから、きっと、僕が幸せになることはほしいです」と彼は書いた。

氷川も「僕が結婚式の会場に行ったら、君は後悔する」と返信した。

美咲は気分よく起き上がり、シャワーを浴びた後、氷川は用意してくれたドレスに着替えた。

ドレスを着て鏡に映った自分を見た瞬間、それが自分だとは信じられなかった。

これが本当に自分なの？

あまりにも美しすぎた！

彼女でさえ、鏡の中の自分に魅了されていた。