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第20話

会社で美咲は午前中ずっと漫画を描いていた。その漫画は、彼女が黒崎拓也に裏切られた後、氷川颯真に出会ったというストーリーだった。

彼女は集中しすぎたから、昼食の時間になったことに全然気づかなかった

仕事に集中していた最中、突然鳴った電話に彼女はハッと気付き、机の上に置かれたスマートフォンを手に取った。表示された名前を見て微笑みながら、「もしもし、どうかしたの?」と優しく問いかけた。

こんな形式的な挨拶を聞いて、氷川は不満げに眉をひそめた。「昼だ、食事をしたのか?」と言った。

もう昼ご飯の時間なの?彼女は忙しかったので、忘れてしまった。

彼女がすぐに返事をしなかったので、氷川は軽く笑って、「僕もまだ食べていないから、一緒に食事しようか?」と提案した。

「あ、はい」と美咲はぼんやりと返事をした。

「今どこ?

「会社?

「じゃあ、十分待ってくれ」

美咲は電話を切った後、笑い出した。彼は十分で自分の会社に着けたのだろうか?まず、事前準備をしろう。

机の上を片付けて、絵本を引き出しにしまうとすぐに携帯電話が鳴り出した。

彼女は電話に出ると、相手の声を聞く前に「すぐに行く」と言った。

「うん」と氷川は軽く返事をした後、素早く電話を切った。

電話を切られた美咲は驚きと呆れが混じった気持ちになり、氷川は女性を追いかけた経験がなかったのかと疑った。先日、彼との通話中に電話を切られたこともあった。会社の前に停まっていたマセラティが目に入り、美咲はドアを開けて素早く乗り込んだ。

車はレストランに向かわなかったため、美咲は「氷川さん、どこに行くつもり?」と尋ねた。

「家に帰る」

外で食事に連れて行ったと思っていたが、家に戻るとは予想していなかった。

美咲が車から降りたとき、代田住宅の中で山田が両手に野菜の入った袋を持って家に向かって歩いていたのを見た。山田は彼女を見つけたと微笑んだ。

「わざわざ山田に買ってくれたのか」と美咲は高価なスーツを着た氷川に尋ねた。

「そうだ」

美咲はどうして元気がなさそうなのだろうか?美咲は一度家の中に入ろうとした。

しかし、氷川に腕を掴まれ、そのまま別荘のキッチンに連れ込まれた。

山田は料理を整えてキッチンを出ると、氷川さんは自らで料理をしようとしていたのを見て驚いた。

これは本当に珍しいことだった。氷川はキッチンのドアを閉め、山田が中を見たことができなかったようにした。

彼は買い物袋から猫の模様が入った二つの可愛いエプロンを取り出し、美咲に一つを渡し、もう一つは自分で着けた。

「この男、一体何をしようとしているの?」と美咲はつい疑ってしまった。美咲はエプロンをしっかり締め直し、キッチンの片隅にあった野菜の入った重い袋を取ろうとした。しかし、袋の重さに耐えきれず、彼女はふらついて転びそうになった。

それを見た氷川は彼女の手首を力強く掴み、腰に腕を回し、自分の胸に引き寄せた。

美咲は男性の気配に一瞬で恐怖を感じて抵抗したが、その反応が氷川の怒りを一層強めていたことには気づいていなかった。

美咲は氷川の腕の中から抜け出すために、彼を押しのけた。彼女の顔が真っ赤になり、心の中の混乱がその表情に表れていた。

「一体何してるの?」と美咲は慌てて氷川に言った。

氷川は少し前に進み、両手をコンロに置いて、美咲をコンロと自分の間に閉じ込めた。彼女を見下ろしながら彼の喉が動き、「さっきはキスする気分じゃなかったけど、今はしたくなった」と言った。

コメント (1)
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千佳子
これからの展開が楽しみ
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