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第7話

私はカフェに座り、向こうにマスクをかけた相手を見つめていた。

かすみはついに我慢できず、警戒心をあらわにしながらマスクを外し、私を睨みつけた。

「紗奈の死んだ写真を私に送りつけるなんて、どういうつもり?」

「当時、彼女を殺したのは美琴で、私には全く関係ない」

先日トイレで見せた冷たく高慢な態度は一変し、かすみは私にそっと頭を下げた。

私はにっこり微笑んだ。

「私は、あなたと取引をしに来たの」

「宗久と結婚したくはない?」

今井かすみは驚いて私を見つめ、何かを言おうとしたが、私は彼女を遮った。

「隠さなくていい。あなたが宗久を好きだって知ってるわ」

「ずっと宗久に想いを寄せていたけど、家柄が美琴には劣るから佐々木家は彼女を選んだのよね。あなたじゃなくて……」

私は静かに語り続けたが、かすみの顔色がどんどん青ざめていくのには構わなかった。

ついに彼女は耐えきれず、テーブルを叩き、傲慢な目つきで私を睨んだ。

「白石紗羅、あんたみたいな貧乏人をどうして信じろって言うの?」

私は襟元を引っ張り、そこにあるいくつもの色っぽい痕を見せた。

口元を手で隠しながらクスクスと笑った。

「どうしてって?私は指を一本動かせばA市の宗久様と寝られるのに、あなたは一生彼に尽くすしかないからよ!」

「でも安心して。私は彼に興味ないから」

かすみは不機嫌そうな顔をした。

私は悪魔のように彼女を勧めた。

「もし美琴が刑事所に入って、夏目家が倒れたらどうなると思う?」

「嫁の家柄を大切にしている佐々木家は、次に誰を選ぶかしら?」

今井かすみは下を向き、私が差し出した証人の署名表をじっと見つめた。

私の声が幽霊のように彼女の耳元で響いていた。

「この表にサインさえすれば、美琴は全てを失う……」

「そしてあなたが次の佐々木の奥さんになるのよ」
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