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第5話

彼が毎回持ってくるのは、自分で煮込んだスープだった。

そして、彼は美代の家のドアを叩く。

美代は――

彼の目の前で、そのスープをゴミ箱に捨ててから、彼を追い返していた。

しばらくして、美代は嫌気がさした。

彼女は警察に通報し、景久を追い払った。

それから、景久は毎日、私のマンションの下で私を待つようになった。

景久は、前後で一ヶ月以上も私を待っていた。

この一ヶ月の間に、遥は何度も彼に会いに来たが、毎回追い返された。

私は、一度も彼に会いに行くことはなかった。

そして次の日。

景久は会社に戻った。

彼が諦めたわけではなく、遥とのスキャンダルを処理しに戻ったのだ。

私は整理した証拠を会社の公式ウェブサイトに送りつけた。

母子製品で成り上がった朝藤グループ、その社長が不倫をしているクズだと暴露されたことで、一時的に会社の株は大幅に値下げた。

ネットユーザーたちは激怒し、毎日公式サイトに罵詈雑言を書き込む人たちで溢れた。

景久は簡単な声明文を出しただけで、また私のマンションの下で私を待つようになった。

夕方、彼から電話がかかってきた。

私に会いたいと。

電話越しで、彼はずっと待っていると言った。

私は「離婚の話をするならすぐ行く」とだけ言い、電話を切った。

その日の夜、大雨が激しく降っていた。

私は雨の中で固執する彼の姿を見て、心の中で笑ってしまった。

遅すぎた情熱。

それに何の意味があるというの?

11、

翌朝早く。

私は遥からの電話を受け取った。

彼女は景久が高熱を出し、今病院にいると言った。

私に彼を見に来てほしいと懇願した。

私は何も言わず、電話を切った。

しかし、結局病院に行くことにした。

私たちの間にはまだ未解決の離婚事項が残っているのだから。

病院の中は、消毒液の匂いが強く漂っていた。

景久は私を見ると、目を輝かせた。

私は彼をじっと見つめ、しばらく何も言わなかった。

彼は慎重に私の袖を引っ張り、期待に満ちた表情を浮かべた。

「瑞穂……」

私は無言で袖を引き抜き、眉をひそめながら一語一語を噛み締めるように言った。

「こんなことをしても、私は嫌悪しか感じないよ」

彼は口ごもりながら言った。

「僕は……別れたくないだけなんだ」

私は笑い声をあげ、再び離婚届を彼の前に放り投げた。

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