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第7話

それでも、景久はずっと私のそばにいた。

14歳から26歳まで。

まる十二年。

別れが来るなんて、考えたこともなかった。

私は静かに涙を流した。

「景久、もう戻れないよ」

景久はただ悲しそうに私を見つめていた。

私は目を閉じた。

過去の数々の思い出が、スライドショーのように脳裏を駆け巡った。

まるでバラバラになった映画のように。

「私はもう景久を愛せない」

「もう私を解放して」

景久は手で顔を覆い、指の間から涙が流れ、肩が震えていた。

「僕は瑞穂を諦めることができないんだ」

「お願いだから、僕を置いて行かないでくれ」

「せめて、せめて少しだけ時間を」

私は彼を見ずに、そのまま階段を上がった。

もう彼を愛していないはずなのに、心は痛む。

かつての共に過ごした日々は、まるで心を抉る柔らかい刃のようだった。

心の奥深くに鋭く、あるいは鈍く刺さり続けている。

その痛みが、いつまでも私を縛りつけていた。

15、

1週間後の朝。

父から電話がかかってきた。

彼は癌を診断され、これからますます悪くなると言われた。

私に会いたいと言う。

私はしばらく考えた末に、父の家に帰ることにした。

彼に金を残して、生みの恩に報いるつもりだった。

食卓で、父は言うほど深刻な様子ではなかった。

私に嫌悪感を抱いていたあの女性の笑顔には、どこかぎこちなさと媚びが混ざっていた。

そしてもう一人の男がいた。

彼は私をじっと見つめ、唇には媚びた笑みを浮かべていた。

頭の中が突然、ガーンと鳴り響いた。

一瞬の混乱で、立っていられないほどだった。

「なんでここにいるの?」

女性は慌てて立ち上がった。

「お父さんの会社がトラブルに巻き込まれて、景久が資金を援助してくれたのよ」

「瑞穂、お父さんの治療費がかかるし、会社がダメになったら大変だよ」

なるほど、そういうことか。

私は自嘲気味に笑った。

「皮肉だね」

「何年も会っていないのに、嘘をつくまで私を呼び戻した理由がまさか、会いたかったわけじゃなくて、私を売って得をしようとしたんだ」

父の顔には焦りが見えた。

「瑞穂、父さんの病気は本当なんだ」

「それに、景久が瑞穂と話す機会が欲しいと言って――」

「もういいよ!」

私は彼の言葉を遮った。

「彼の顔を見たくない」

「わか
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