第4話

「抑えきれない？」

私は嘲笑を浮かべて言った。

「その慣れた様子だと、まるで商売でもしているのかと思ったわ」

遥は一瞬顔を引きつらせたが、すぐに泣き出した。

「私はただ、朝藤さんのことが好きで、瑞穂さんと朝藤さんの関係を壊すつもりなんてなかったの」

私は黙っていたが、彼女は私の腕を掴み、激しく揺らした。

「瑞穂さん」

「私は何もいらないから、ただ朝藤さんのそばにいたいだけなの」

私は景久の方に視線を移し、皮肉な笑みを浮かべた。

「深い愛情ね」

私は深呼吸を一つし、

「景久、早く離婚届にサインしてちょうだい」

「さもないと、このことをメディアに暴露してやるから」

そう言って、私はその場を去ろうとした。

「瑞穂、待ちなさい！」

突然、遥が後ろから私を押した。

バランスを崩し、そのまま階段を転げ落ちた……

景久が慌てて駆け下りてきた。

「瑞穂、大丈夫？」

腹部に鈍い痛みが走り、血がスカートを染めていく。

景久は震える手で私を抱き上げようとしたが、私は彼の胸を押し返し、声をあげて笑い出した。

「見てよ、あんたの愛人が、あんたの子供を殺したんだ」

「残念だったね、景久」

私は彼を見つめ、心の中に恨みが募る。

しかし、顔には柔和な表情を浮かべた。

「今日、驚かせようと思って来たのに」

「久、どうして私にこんなことをするの？」

9、

この一ヶ月間、美代は毎日仕事が終わると、いつも魚のスープを持って私を見舞いに来る。

「アイツ、マンションの下で立つのはこれでもう十日目だよ」

「まるで浮気したのが彼じゃないみたいにさ。今更、そんな演技しやがって」

私は表情を変えず、パソコンでタイピングを続けた。

美代はしばらく私をじっと見つめた後、再び尋ねた。

「瑞穂、本当に決めたの？」

パソコンには、私が整理した景久の不倫の証拠が映っていた。

彼が素直に離婚に応じれば、このファイルは公開しないつもりだ。

「決めたよ。もう迷わない」

美代はそれを聞いて満足したようで、また私にスープを注いでくれた。

深夜4時。

私は風衣を羽織り、ゴミを捨てに行くために箱を抱えて階段を降りた。

空は墨を流したように真っ暗だった。

陰鬱な空模様は、今の私の心情そのものだった。

路上の街灯の下に、見覚えのある影が立っていた。背の高いその影は