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第289話

二人は一緒にスキンケアを受けていたため、玲奈は電話に出られなかった。

今度は奈美が電話に出ない。

玲奈は考え込んで言った。「それは必ずしも真実ではない。奈美は今評判も悪くて仕事も失って、お金に困ってるはず。彼女がお金のために嘘をついているかもしれないわ」

詩織も頷いた。「確かにそうかもしれないけど、何の理由もなくそんなことを言うはずがないでしょう?」

「紗希が妊娠しているなら、もしかして拓海兄さんの子供かもしれない。そうなると詩織姉さんに悪いじゃない?」

詩織は眉をひそめたが、そう思っていなかった。

最近、紗希は北兄と親密になっている。もしかしたらこの子は北兄の子供かもしれない。

詩織はそう考えると気分が悪くなった。彼女は絶対に紗希を北兄と関わらせるわけにはいかない!

詩織は色々考えた末、すぐに自分の助手に電話をかけた。「病院に行って紗希の診察記録を調べて。本当に妊娠しているのか確認して」

もし紗希が本当に妊娠しているなら、誰の子供であろうと、その子を産ませるわけにはいかない。

玲奈は口を開いた。「詩織姉さん、この前の紗希の家の立ち退き補償金の件はどうなった?私は紗希が困る姿を早く見たいわ」

「安心して。もう手配したわ。彼女はそのお金を受け取れないはずよ」

詩織の目に冷たい光が宿った。彼女はまだこれくらいのことができるのだ。紗希のようなやつが生意気な態度を取り、前回学校で彼女に謝罪を強要したのだから。

今度こそ紗希に思い知らせてやる。

一方、紗希は検査を終えて帰宅すると、伯母が落ち着かない様子で、しきりに携帯を見ていた。

紗希は不思議そうに聞いた。「伯母さん、どうしたんですか?」

「紗希、立ち退き補償金が昨日から振り込まれ始めたそうだけど、私たち家族のお金は今日も届いていない。周りはみんな入金されてるのに、うちだけまだなのよ。何か問題があるのかしら?」

紗希は戸惑いながら口を開いた。「おかしいですね。銀行口座は私が言った通りのものですか?」

「ええ、間違えないように写真まで撮ったのよ。口座番号も確認したけど、間違いないわ」

「伯母さん、心配しないで。明日建設会社に確認に行きます。三井不動産グループは大手企業だから、きっと問題ないはずです」

紗希は伯母を慰めた後、この件が詩織と関係があるという疑念を抱いた。

前回、詩織はこの件
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