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第293話

紗希は昨日南兄からもらったものを使って、詩織とその立ち退き部門の松下に目にものを見せてやろうとしか考えていなかった。

だが、ここで強い相手に出会うとは思わなかった。

今、南兄から電話がきたということは、何か問題があることを知っているに違いない。

「いやいや、ただプログラムが使用されているのを監視していて、ちょっと見ただけだよ。今お前の状況が心配で、助けは必要なのか?」

「大丈夫。私は自分で解決できるよ」

紗希は南兄がくれたプログラムで十分だと感じていた。今、すごく強い相手が現れたけど、目的が既に達成できていた。

南は言葉に詰まった。「分かった、何か問題があったらすぐ連絡してね」

南も正体を明かさないように、これ以上聞くわけにはいかなかった。

紗希は電話を切った後、パソコンの画面を見ると、相手の強いハッカーは追いかけてこず、むしろ止まっていた。

まあいい、とにかく、彼女の目的は達成されたのだ。強い相手と戦う必要もなくて、南兄に迷惑をかけたくなかった。

紗希はUSBを抜き、これで立ち退き部門の松下が自分に会ってくれるはずだ。

「紗希、ここで何をしているの?」

詩織は会社に来て、ロビーの応接スペースに座っていた紗希を見つけると、すぐに高慢な態度で近づいてきた。「ここはあなたが来るべき場所じゃないわ」

紗希は目を上げて言った。「お金を要求しに来たの。ここに来なければどこに行けばいいの?」

「へぇ、お金を要求しに来たの。前は誰かさんが立ち退き料なんて気にしないって言ってたのに、今になって急いで押しかけてくるなんて?」

詩織は得意げな表情を浮かべ、紗希が絶対に立ち退き料のことを気にすると分かった。そして、彼女は声を低くして言った。「この金を手に入れるのも簡単だ。私に誠実に謝れば、すぐに立ち退き部門に連絡して、振り込ませてあげるわ」

紗希は冷静な表情で言った。「いや、今度はあなた達が私に謝って、おとなしくお金を口座に振り込むのを待つわ」

「ハハハ、紗希、頭がおかしくなったの?夢でも見てるの?謝らなければ、あなたは一生このお金を手に入れられないようにできるのよ」

紗希は皮肉げに笑って言った。「じゃあ、会社のウェブページで正義を求め続けるしかないわね。あなたの長兄がこのことを知ったら、どう対処するか見てみたいわ」

詩織は表情が不自然になり、すぐに
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