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第298話

先ほどの部長は叱られたのだろうか?

紗希はわざと表情を硬くして言った。「まあ、お金が入金されたので、もう深く追及しないわ」

「ありがとうございます、紗希さん。申し訳ありませんでした」

再開発部の部長が何度も謝罪する中、傍らから詩織の声が聞こえた。「ふん、情けない!軟弱者!」

紗希は顔を上げると、詩織がエレベーターから出てくるところが目に入った。傲慢な態度で立っている詩織に、紗希は冷静に答えた。「これは過ちを認めて改める態度だよ」

「紗希、今日の小細工で勝てると思わないで」

「まあまあ、少なくとも私の目的は達成できたわ」

紗希は目の前の紗希を見つめながら言った。「次回また同じような見下げ果てた手段を使うなら、音声ではなく動画を公開することになるかもしれないよ。あなたは私があなたの顔立てを保ったのに感謝すべきね」

それを聞いた詩織は怒った。「紗希、男を誘惑する手腕を見くびっていたわ。あなたがハッカーまで見つけて違法行為をさせるなんて」

紗希は皮肉な笑みを浮かべながら言った。「何を言っているのか分からないわ。発言には証拠が必要で、今のことが私の仕業だって証明できるの?」

彼女はそれを認める愚か者ではなかった。

詩織も負けじと言った。「あなたはさっきビデオと音声のことを認めたじゃないの」

「そう?適当に言っただけよ。詩織さんは音声の中の人があなただと認めているの?」

詩織は一瞬に言葉に詰まった。もちろん、彼女はそれを認めることはできなかった。

先ほど平野兄のオフィスで、彼女は既に平野兄に叱られていた。平野兄はそう簡単には騙されないから。

紗希はまぶたを持ち上げて言った。「詩織さんがもう話すことがないなら、私は行くわ。バイバイ」

彼女はさっぱりと振り返り、会社から離れた。

詩織は怒って足を踏み鳴らした。「紗希、覚えておきなさい!」

しばらくすると、専用エレベーターのドアが開き平野は中から出てきたが、紗希の姿は見当たらなかった。

紗希がどこに行った?

平野の助手は口を開いた。「社長、監視カメラの映像を確認したところ、紗希さんは既に帰られました」

平野は少しほっとした。紗希が怒っているのではないかと心配だったし、この時点で紗希に彼の正体がばれるのも怖かった。

詩織の件が解決するまでは彼は紗希と向き合う勇気が出なかった。

その時、法務部
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