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第300話

正午になると、風間は外に出て行った。「紗希、正午に一緒に食事をしよう」

「はい。先輩、私に奢らせてください。この前私を助けて怪我をしたのに、ずっとどうお礼を言えばいいか分かりませんでした」

「お礼がしたいなら簡単だよ。ただ私のそばにいてくれればいい」

紗希の表情は少し気まずく、次の瞬間風間は慌てて言った。「冗談だよ。気にしないで。さあ、食べに行こう」

その時、中年の女性が入ってきた。「風間、仕事は終わった?鶏がらスープを作っておいたから、体に栄養を補給してくれ」

「母さん、どうしてここに来ましたの?お昼には帰らないって言ったでしょ?」

風間は眉をひそめ、紗希が今日スタジオで当番だと知っていたから、わざと偶然を装って紗希を誘おうとしたのに。

彼は自分の母が鶏がらスープを持ってオフィスに来るとは思わなかった。これは彼を邪魔じゃないか。

「風間、会社で満足に食事ができないんじゃないかと心配で、スープを持ってきたのよ。ちょうど紗希さんもいるし、一緒に食べたらいいの?」

紗希は気まずそうに笑った。「おばさんはもうお昼食べました?まだ食べないなら、一緒に食べに行きませんか」

「私はまだご飯を食べないよ。風間に鶏がらスープを届けたら家で食べるつもりだったの。あなた達は鶏がらを持って外に食べに行けばいいじゃないか、私を連れてきたら絶対に不愉快になるよ」

「おばさん、食事くらい気にすることないです。今から帰るのも時間がかかるし、一緒に外で食べましょう」

紗希はこの状況で風間の母親を一人で帰らせるわけにはいかなかった。

風間は少し困った様子で。「行こう。いい店を知ってるよ。ちょっと遠いけど、どうせ午後は何もすることがないんだから、一緒に行って食べよう」

彼が慎重に計画したデートは、母親に台無しにされてしまった。

車に乗る時、風間は無意識に紗希に助手席のドアを開けたが、彼女は一瞬に躊躇して風間の母親の方を見た。「おばさん、前の席にどうぞ」

「紗希が気が利くわね。私は車酔いするから、助手席に座ればよくなるのよ」

風間の母親はそう言いながら、スムーズに助手席に座った。

紗希は後部座席に座り、先輩の母親と助手席をと争うつもりはなかった。

「紗希さん、週末もスタジオで残業するなんて驚いたわ。あなたみたいに仕事熱心な若い子は珍しいわ。今時の若い人は残業嫌がるで
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