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第191話

紗希は義母の美蘭の驚いた表情を見て、少し面白く感じた。

実は、この話は、前回養父母が別荘にお金を要求しに来たとき、養父母を追い払うために故意にそう言ったのだった。

しかし、拓海が直接、美蘭さんのメンツを気にせず反論するとは思わなかった。

次の瞬間、男の深い眼差しが紗希に向けられ、彼女は息を飲んだ。

彼は何を見ているのか。

この話は彼女が言ったわけではない。

拓海は冷たい声で言った。

「何のために200万円を送金したんだ?」

紗希は驚いた。

「これはあなたのお母さんに返すお金よ。彼女のLINEを持っていないので、あなたに送金してもらうしかない」

拓海は振り返って美蘭を見た。

「一体どういうことだ?」

「拓海、さっき紗希の養父母が来てお金を要求したの。面倒だったから200万円で追い払ったわ。どうせ大した金額じゃないし」

男は眉をひそめた。

「その金は、渡すべきじゃなかった」

紗希の養父母は金の亡者のようなものなので、お金を渡せば味をしめて、同じ手段で紗希にお金を要求し続けるだろう。

「拓海、この子にお金を使う価値がないと考えたのは分かるけど、このくらいの金で厄払いできるならいいじゃない」

拓海は唇を噛んだ。

金を使うのが惜しいと言ったわけではない。

ただ、その金を使うべきではないのだ!

紗希は冷たく微笑み、こう言った。

「他に何もないなら、私が先に帰る。今後彼らが来ても、中に入れないで」

そう言って、紗希は振り返ることなく去った。

この時間外は真っ暗で、公共交通機関もなく、タクシーも拾えない。

すぐに、黒い高級車が彼女の横に停まり、運転手が窓を下げた。

「若奥様、乗ってください。お送りします」

「いいえ、結構よ」

紗希は車に乗らなかったが、運転手は言い続けた。

「若奥様、ここではタクシーを拾えません。送らせてください。社長の荷物を取りに行く途中なので、ちょうどついでです!」

彼女は少し歩いてタクシーが拾えないことを確認してから、やっと車に乗った。

安全と意地の間で、彼女は命を守ることを選んだ。

車に乗ってからも少し落ち着かない様子で、運転手を見て言った。

「ありがとう」

「どういたしまして」

運転手はバックミラー越しに紗希を見て、ほっとした。

この任務を完遂できなければ、帰って何と言い訳すればいいのか
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