第197話

紗希は外に立っている人を見て、すぐにドアを閉めようとした。

北兄さんが鍵を忘れて帰ってきたと思ってのぞき穴で外の人を確認しなかったのを、今少し後悔していた。

「紗希、何でドアを閉めるんだ？」

養母は強引にドアを押し開け、厚かましくも中に入り込んだ。

「紗希、お前たち二人を探すのに苦労したぞ。こんなにきれいで高級な地区に住んでいるのに、まだお金がないと言っているなんて、嘘をついているんじゃないの？」

養父は顔をしかめて言った。

「紗希、取り壊した後の家も、立ち退き料も、すべて僕の息子の結婚資金にする。先に言っておくぞ」

紗希は冷たい表情で答えた。

「その家は伯母のものよ。あなたたちに何の権利もないわ」

「お前の伯母は家と金を何に使うんだ。俺の兄はまだ病院で生きてるんだぞ。お前らが家も金も取り上げたら、将来、お前が再婚したとき別の男に取られたらどうするんだ？ だから私は弟として、兄が目覚めた時に何も残ってないなんてことにならないように、お金を守るために介入する必要がある」

養父が主張すると、養母が続けていった。

「その考え、誰が聞いても納得するでしょうね」

紗希には養父母が何を企んでいるかはっきりわかっていた。

明らかに、立ち退き料を独り占めにしようとしているのだ。

そのとき、平野は洗面所から出てきて、冷たい目つきで外の養父母を見つめた。

「どうした、この前の殴られ方じゃまだ足りなかったのか？もう一度殴られたいのか？」

養父は平野を見ると、顔色が変わり、前回骨折した腕を押さえた。

今でも雨の日には腕の痛みがぶり返す。

養母は驚いて一歩後ずさりした。

紗希の兄が来ているとは思わなかった。

養父母にとってこの状況は良くなかった。

平野は体格が良く、顔つきも攻撃的で、目つきは黒く深く、非常に迫力があった。

養父母はすぐにドアの方へ後退したが、まだ出て行こうとはしなかった。

台所にいた伯母は声を聞いて様子を見に行こうとしたが、静香に引き止められた。

「伯母さん、これは若い人たちに任せましょう。顔を出さない方がいいわ。おいしい料理を作り続けてください。三男が帰ってきたら食事を始められるように」

伯母はまだ心配そうだった。

「本当にそれでいいの？」

「何も問題ないわ。伯母さんが出て行っても何も解決できないし、むしろ彼らに迷惑をか