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第205話

看護師の言葉が終わるや否や、北の心臓は喉まで飛び上がった。

まずい、ばれてしまう。

紗希は疑わしげに見て言った。

「妹?」

北兄さんには他に妹がいるの?

北は急いで説明した。

「紗希、他に妹なんていないよ。誓うよ!」

彼は心の中で詩織を妹として認めたことは一度もなかった。

紗希は苦笑いして言った。

「北兄さん、私はまだ何も言ってないのに、どうしてそんなに慌ててるの?」

まるで自分は北兄さんの恋人で、北兄さんに他の恋人がいるのを発見したかのようだった。

北は咳払いをして言った。

「とにかく説明しておく必要があるんだ」

彼は看護師の方を向いて言った。

「分かった、後で行く」

北は看護師の後の言葉を遮った。

誰が自分を探しているか分かっていた。

本来は今日、拓海と手術の計画について話し合う約束だったが、紗希が突然具合が悪くなって救急に運ばれてきたので、紗希を優先したのだった。

「北兄さん、先に行って何が起きているのか見てきて。私はここで大丈夫だから」

紗希がそう言うと、風間はすぐに北を見て言った。

「ご安心ください。ここで紗希を見守りますから」

北は頷いて言った。

「紗希、ここで休んでいて。後で一緒に帰ろう」

言い付けを終えると、北はエレベーターで上階の自分のオフィスに戻った。

オフィスのドアを開けると、中にいる詩織と拓海が見えた。

北の表情は冷淡だった。

詩織は嬉しそうに立ち上がって言った。

「北兄さん、何度も電話したのに出なかったわね。今日はそんなに忙しいの?」

「ああ、救急患者の対応が必要だった」

詩織の目が輝いた。

「さっきの救急患者は女性だった?」

さっき紗希も救急科に運ばれたようだった。

隣の拓海が突然顔を上げ、北の答えを知りたがっていた。

本当に紗希なら、彼女の健康状態はどうなのだろう?

北は目の前の二人を疑わしげに見て、視線を拓海に移した。

以前拓海が紗希を病院に連れてきた場面を思い出し、彼はすぐに否定した。

「女性じゃない」

彼は認めるつもりもなかったし、紗希と拓海に何の関係もあってほしくなかった。

詩織の目には少し残念そうな色が浮かんだ。

どうして違うんだろう。

もしそうだったら良かったのに、ついでに紗希を蔑むこともできるのに。

拓海は視線を戻し、すぐに言った。

「手術
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