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第204話

紗希はちょっと間を置いて言った。「北兄さん、私は今のところ、妊娠のことを人に知られたくないの」

少なくとも拓海と正式に離婚手続きを済ませるまではだめだった。

北は少し理解できずに聞いた。

「なぜ?子供の父親があなたを脅かすのか?」

紗希は首を振った。

「北兄さん、私のために秘密を守ってくれない?」

彼女はそう言って、かわいそうな顔で彼を見つめた。

その瞳は丸くて黒白がはっきりしていて、小動物のようだった。

北はその目を見て、3秒も経たずに降参した。

もういいや、妹が何をしようと勝手だった。

妹だから受け入れるほかしょうがなかった。

この何年間も妹に申し訳ないことをしてきたのだから、珍しく妹が自分に頼み事をしてきたのに、妥協する以外に何ができるだろうか?

年上としての威厳?

それは食べられるのか?

妹より大事なのか?

北は妹の頭をなでながら言った。

「分かった。お前のためにこの秘密を守るよ。ただ、自分の体をしっかり大事にすること、何か具合が悪くなったらいつでも私に言ってくれると約束して」

「約束する!今回倒れたときも、すぐにあなたに連絡したでしょ」

紗希は今のところ北兄さんしか信じられなかったので、強くこの病院に来ることを要求した。

北は眉を上げた。

「そういえば、今回お前を病院に連れてきた若い男は誰だ?お前の追っかけなのか?まあまあの顔立ちだったな」

「あのね、北兄さん、誤解しないで。彼は私の働いているスタジオの社長で、上司なの」

「ああ、スタジオの社長か。まあ、上昇志向があるみたいだから、頑張れば将来性はあるかもしれない」

北の目には少しの軽蔑と審査の色が浮かんでいた。

紗希がこんなに優秀なのだから、普通の男では全然釣り合わないと思っていた。

小さなスタジオの社長なんて収入がきっと高くないだろう。

彼は仕事の方面では少し物足りないんじゃないか?

紗希は少し困った様子で言った。

「北兄さん、変なこと言わないで」

このとき、北の白衣の中の携帯電話が鳴り続けていたが、彼はちらっと見ただけで取り出そうともしなかった。

そのとき、風間が入ってきた。

「紗希、目が覚めたんだね。大丈夫?」

「大丈夫です、先輩。さっき、ありがとうございました」

「そんなの大したことじゃないよ。お前が気絶したときは本当に驚いたけど、
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