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第202話

奈美は言った。

「さっき私が紗希にわざとぶつかろうとした時、彼女は無意識にお腹を守って、すごく激しく反応したの。前から紗希が妊娠してるんじゃないかって疑ってたけど、確かめる機会がなかったのよ」

これを聞いて彼女が言い返した。

「どうしてあなたの言うことを信じなければならないの?前回も紗希の噂を流せるとまで言ったが、どうなったあのせいで私は家族からも叱られた」

奈美の目に憎しみの色が浮かんだ。

そう、玲奈彼女ははお嬢様だからこそ傍観者でいられる。

奈美だけが全ての責任を負わなければならない。

誰も彼女がこの間どう過ごしてきたかなんて気にしない。

奈美は冷たい口調で言った。

「紗希の背後に男がいるから、今回は災難を逃れられたのよ。紗希の子供は、あの男の子供ではないかと疑っている」

「あなたの言うことも、全く理由がないわけじゃないわね」

玲奈は真剣に考えた。

紗希の後ろ盾となる男と言えば、最優主演男優賞の直樹以外にいない。

この男が邪魔をしなければ、とっくに紗希を始末していたはずだった。

玲奈は新しくしたネイルを見つめながら言った。

「でも、紗希が本当に妊娠していることを証明できない限り、これはすべてあなたの推測に過ぎない」

「紗希が妊娠してる証拠を見つける方法を考えるわ。でも玲奈さんも私の最近の状況を知っているでしょう。私は仕事も失って、業界での評判も最悪だから、誰も雇ってくれない。だから最近お金がないの」

ちっ、玲奈の目に嘲笑の色が浮かんだ。

「20万円をあなたに振り込む。証拠さえ見つければ、ちゃんと報酬を払うから」

奈美はLINEで友達追加の承認と20万円の振込を確認すると、不満そうな表情を浮かべた。

この程度の金額は昔の彼女にとっては大したことなかった。

たった20万円しか渡さないなんて、玲奈は物乞いにでも施したつもりか?

でも今はお金に困っているんだから仕方ない。

奈美はスタジオの方向を振り返った。

絶対に紗希も玲奈も許さない。

——

スタジオでは、紗希が不安な様子で椅子に座っていた。

さっきはあやうく大変なことになるところだった。

風間は近づいてきて、温かい水を一杯注いだ。

「大丈夫?」

「大丈夫です。先輩、さっきはありがとうございました」

紗希はその温かい水を数口飲んで、少し落ち着いたが、心臓の鼓
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