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第196話

詩織は、玲奈のように計画性なく大金を使うようなことはしなかった。

もし彼女が本当に小林家のお嬢様だったら、こんなに一生懸命働く必要はなく、玲奈のように何も心配せずに過ごせただろう。

紗希は平野兄さんと静香姉さんと一緒に家に戻った。

伯母はすでに台所で忙しなく動いていた。

静香は台所を見て言った。

「いい匂い。伯母さん、何を作ってるの?」

「青阪市の名物料理を作ってるわ。前回、静香姉さんが好きだったでしょ?伯母さんが朝から市場に行って、新鮮な食材を買ってきてくれたの」

「すごくいいわね。私も台所に行って手伝うわ」

静香は贈り物を置くと、すぐに台所に向かった。

紗希と平野兄さんはリビングのソファに座った。

彼女は果物を出して言った。

「平野兄さん、長時間の飛行機でお疲れでしょう。果物を食べてビタミンを補給して」

実は平野は普段そういった果物をあまり食べなかった。

甘すぎるからだ。

通常は錠剤でビタミンを補給していた。

しかし、紗希の顔を立てるために、平野は丁寧に果物を少し食べた。

「紗希、前回の噂事件については心配しないで。悠真が責任を徹底的に追及するよ。噂を流した奈美はすでに訴状を受け取っている。それに、あの会社は破産と買収の危機に直面している。すぐにその家族は住む場所を失い、巨額の負債を背負うことになるだろう。この事件に関わった全ての人が良い目に遭わないよ!」

紗希は果物皿を手に持ったまま驚いた様子で、目の前の平野を見つめた。

「平野兄さん」

「紗希、他に不満なことがあれば、遠慮なく言ってくれ」

平野は期待に満ちた表情で彼女を見つめた。

今回、手元の仕事を全て延期してここに来たのは、この件を処理するためだった。

紗希がこんなにひどい噂事件に遭遇したのだから、兄さんとして必ず介入しなければならなかった。

紗希は果物を一口食べて言った。

「平野兄さん、どうしてその家族がすぐに住む場所を失い、巨額の負債を背負うことになると知っているの?」

彼女は、悠真が法律事務所で働いているので、声明を出して噂を流した人を訴えることは理解できたが、平野兄さんがその会社の破産について、まるでその会社を平野兄さんが買収したかのように詳しく知っているのは不思議だった。

平野は目を泳がせた。

うっかり口を滑らせたようだ。

しかし、彼は
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