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第195話

北は一瞥してから電話に出た。

「何か用?」

「北兄さん、平野兄さんと静香姉さんが今日飛行機でここに来たことを知ってる?」

「そう? 知らなかったけど」

北は詩織が情報を探っていることを察し、何も言わなかった。

さっき静香がLINEの家族グループで、詩織が密かに空港に来て奇襲しようとしたことや、紗希にあやうくばれそうになったことを話していたので、詩織には教えたくなかった。

詩織はまだ、空港の駐車場にいた。

長い間待っても兄夫婦が出てこないので、彼女の表情に疑いの色が浮かんだ。「

北兄さん、本当に知らないの?」

「ずっと忙しかったから、知るわけないだろ?」

「平野兄さんと静香姉さんは本当に来たのよ。私が空港に着くのが少し遅れて、会えなかったの。一緒に夕食をとるために、電話で居場所を聞いてみたらどう?何しろ、彼らは私の婚約パーティーのために来ているんだから、何もしないわけにはいかないわ」

北はあいまいに答えた。

「忙しいのが終わったら聞いてみるよ」

もちろん、聞くつもりなどなかった。

詩織は心の底で少し不満を感じた。。

これは明らかに言い逃れだ。

彼女は続けて聞いた。

「北兄さん、平野兄さんが今回なぜ小さな製造会社を買収しようとしているのか知ってる?私たちの不動産会社と製造業なんて全然関係ないじゃない。平野兄さんが突然あの小さな会社を買収すると決めたのは、本当に意外だったの」

最も重要なのは、あの会社がちょうどあの老人のもので、今回の噂事件の主要人物だということだった。

もし平野が突然買収して、あの会社を破産させ、一家が散り散りになっていなければ、確実に紗希を懲らしめられたはずだ。

しかし、この会社が突然倒産し、最終的に紗希は無実を証明し、何事もなかったかのように済んでしまった。

詩織はそれを考えるだけで悔しかった。

理由を探ろうとしたが、兄の会社の上層部は口が堅く、誰も彼女にこの件の理由を教えてくれなかった。

北はもちろん買収の背後にある理由を知っていたが、紗希には言わなかった。

「俺にもわからないよ。平野兄さんの会社のことには普段から関心ないから」

北はこう答えた。

詩織は電話を切った後、暗い表情を浮かべたが、すぐに表情を取り繕い、玲奈の方を振り返り、笑顔で言った。

「平野兄さんは用事があって先に行ったわ。今回も
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