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第192話

拓海は眉をひそめて言った。

「会議があるんです。母は先に帰ってください」

「仕事であまり無理しないでね。じゃあ帰るわ」

美蘭はいつも息子の仕事を邪魔しないようにしていた。

心の中にどれだけ言いたいことがあっても、飲み込むしかなかった。

美蘭が帰った後、拓海は下の階のホールに戻った。

傍らで裕太がすぐに言った。

「社長、若奥様を無事に送り届けました」

「うん」

拓海はソファに寄りかかり、眉に悩みの色を浮かべながら、顔を横に向けて言った。

「お前も帰っていいよ」

裕太はそれを聞いて別荘を後にした。

拓海は携帯を取り出し、紗希が自分に送ってきたメッセージと200万円の送金を見て、鼻についた。

彼は唇を噛みながら、メッセージを送った。

「送金を撤回しろ」

メッセージを送ると、すぐに対話ボックスに赤い点が表示された。

「まだ相手の友人ではありません。追加してからメッセージを送ってください」

空気が一瞬で冷たくなった。

拓海は画面をしばらく見つめた後、すぐに紗希に電話をかけた。

あの女、彼のLINEを削除したのか?

一方、紗希は彼の電話を見た時、まだ車の中で家に着いていなかった。

本当は電話を出たくなかったが、運転手の車に乗せてもらったので、電話に出ないのはよくないと思った。

電話に出ると、向こうから男の歯ぎしりする声が聞こえた。

「紗希、よくも俺を削除したな」

紗希は唇を噛んだ。

「あなたのお母さんに言われたからよ」

「母親っ子なのか?彼女が言ったから削除するのか?」

「......」

この言葉には、本当にどう答えていいか分からなかった!彼女の母親でもないのに!

電話の両端が静かになった。

紗希は目を伏せて言った。

「実際、今の私たちの関係では連絡先を残しておいても意味がないわ。削除した方がいい。お互い関わりがなくなるし」

「関わりがないって、そう簡単に言えるのか?おばあさんにどう説明すればいいんだ?」

「おばあさんはあなたの携帯を見て、私たちが連絡先を削除したかどうか確認したりしないでしょう。それに離婚後は何の関係もないわ。適切な元恋人のように振る舞って、お互いそっとしておくべきじゃないの?」

運転手は車を運転しながら、若奥様の言葉を聞いて額に汗が浮かんだ。

なぜまた喧嘩が始まったのか。

「ふん、いいだ
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