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死んでから、夫は私を愛し始めた
死んでから、夫は私を愛し始めた
著者: 東流水木

第001話

私の死後7日目、夫は初恋の人と私たち結婚時の寝床でまぐわっていた。

夫は願いが叶ったような顔で言った。「やっとあのホステス女と会わなくて済む」

後になって、夫は私の遺品を抱きしめながら懺悔した。「葵、どうして帰ってこないんだ?」

彼は忘れてしまったようだ。あの夜、初恋の人の骨髄移植のために私を追い詰め、私は命を落とした。そして、お腹の中の子も一緒に......

黒井遼が帰ってきたとき、私はわずかに膨らんだお腹を撫でていた。そこには私たち二人の子供がいる。

実は、この嬉しい知らせを彼に伝えようと思っていたところだった。思いがけず彼が帰ってきたのだ。

結婚して10年、初めてこんなにもタイミングが合った。

「あなた、私、妊娠したの!」

私は思わず幸せな笑みを浮かべた。ドラマのように、遼が私を抱き上げてくるくる回してくれるのを想像して。

でも、想像した光景は現実にならなかった。彼は眉間をつまみ、疲れた様子を隠せずにいた。その疲労感に私の胸が痛んだ。

「葵、清花が君の骨髄を必要としている」

彼の口調に隠しきれない疲労感から、清花が誰なのか推測するのは難しくなかった。彼の叶わぬ初恋の人だ。

濑岛清花は金目当ての女で、遼がまだ貧乏だった頃、金持ちと駆け落ちした。今になって何しに戻ってきたのか。

あの頃の遼はまだ起業したばかりで、資金が急務だった。私はホステスになり、昼夜問わず接待をこなし、胃に出血するほど酒を飲んだ。

やっと彼の起業資金を貯めることができて、彼は私に最高の結婚式を約束してくれた。

その後、遼の資産が増えるにつれ、彼は私を第一線から退かせ、専業主婦にした。

彼は言葉にしなかったけれど、私のことを大切に思ってくれているのはわかっていた。

悲しい思い出が蘇り、私は鼻をすすった。そして、思わずもう一度繰り返した。

「あなた、私、妊娠したの。それに、彼女はろくな女じゃないわ!」

彼は苛立たしげな表情を見せ、私を非難しているように見えた。

「葵、お前はただのホステスだ。今は贅沢を言っている場合じゃない。清花にはお前の骨髓が必要なんだ」

私は呆然と彼を見つめた。かつて彼が私の手を取り、約束してくれた日々が蘇る。

「葵、君がホステスになったのは俺のためだ。俺は絶対に君を蔑まないよ」

私は初めて彼の要求を断った。自分のためではなく、お腹の子のために。

彼の口調が一気に冷たくなり、苛立ちを隠せない様子だった。

「葵、今日は行きたくなくても行くんだ!」

目を開けると、私の手足は手術台に縛り付けられていた。黒井遼は珍しく笑みを浮かべ、濑岛清花がそばで上辺だけの同情を装っていた。

「遼さん、麻酔って体に悪くないですか?私が役立たずだから、葵さんに苦しい思いをさせてしまって......」

彼は私に麻酔を使ったのだ!

お腹に激痛が走り、瞬く間に涙があふれ出た。

「あなた、赤ちゃんが......赤ちゃんが!痛いわ!」

清花はすぐに立っていられなくなり、か弱そうな様子を演じた。

「私のせいです。葵さんに痛い思いをさせてしまって......」

遼は優しく彼女をなだめ、その目尻の涙をそっと拭った。

「清花、君は悪くない。絶対に悪くないんだ」

彼は私の方を向いた。初めてあんなに優しい表情を見せ、穏やかな口調で話しかけてきた。

「葵、医者が言うには君は妊娠してなかったそうだ。これからは何でも欲しいものをあげるよ」

妊娠してない?でも、どうしてこんなに痛いの?

遼の優しい声が耳元で響き、今まで聞いたことのない甘い言葉を囁いた。

「葵、何が欲しい?何でも買ってあげるよ」

目の前に迫る彼の整った顔を見つめながら、期待を込めて控えめな願いを口にした。

「あなた、これからもう少しだけ私のことを愛してくれる?」

私はずっと遼が少しは私を愛してくれていると信じていた。でも、彼が濑岛清花をなだめる様子を見て、その骨身に染みついた優しさを目の当たりにして......

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