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第003話

黒井遼、あれが縁起が悪いとでも思うのか?でも、あれはあなたの妻で、あなたの子供なのだ!

私は彼の襟元をつかんで問い詰めたかった。でも、ただ哀れな観客でしかないのだ。

医者は彼を制止し、火葬料金の支払いを求めた。すると義母が最初に猛抗議した。

「みなさん、無慈悲な病院を見てください!勝手に料金を取るなんて、一般市民を馬鹿にしているのでは?」

遼はわずかに眉をひそめた。私はよく彼のその仕草を知っている。彼は嫌悪の感情を抱いたのだ。自分の母親すら嫌っているとは思わなかった。

現在の遼にとってお金はなんでもない。面倒なことを避けるため、財布から適当に数枚のお札を取り出して払った。相手が誰であろうと気にも留めずに。

「黒井さん、奥さんについては......」

当然のことながら、遼はまた医者の言葉を遮った。

「私にはあの女のゲームに付き合う気はない。勝手にすればいい」

彼はしばし目を細めた後、私の遺体から覗く指先を見つめた。そこには結婚時に彼が4万円ほどで買った指輪がはまっていた。

私の心臓がどくんと跳ね上がった。あり得ない望みを抱いていた。もしかしたら、遼はあの指輪を認めるのではないか。

「安っぽいものだな」

私の魂さえ痛めつけられた。

黒井遼の会社は設立以来2番目の財務危機に見舞われた。

1番目の財務危機は私の父が引き起こしたものだった。

当時、彼はつい最近濑岛清花に振られたばかりで、私はその隙を窺っていた。尊厳すら捨ててホステスになった。

父は憤慨し、メディアの前で大暴れした。

義母もそのため私を恨むようになり、私が遼の災いの種だと考えるようになった。遼もその頃は私に極端に冷たくあしらった。

「お前のせいで、俺の血と汗が無駄になったんだ!

「葵、お前は愛されない運命なんだ!」

しかし二人には、後に私が父に死を覚悟させ、勤労者の父さえ遼の起業資金として数百万円を捻出させたことを知る由もなかった。

濑岛清花が泣きじゃくりながらオフィスに入ってきた。黒井遼が投げつけた弁当箱に驚いて飛び上がる。

「なんてくだらない物をオフィスに持ち込むんだ。以前の店の弁当に戻せ!」

助手は唯々諾々と従い、本当のことを言う勇気がなかった。

遼は胃病持ちだった。そのため私は毎日レシピを研究し、彼にもう一口でも多く食べてもらおうと努力していた。

生前は彼の心をつかめなかったのに、死んでから彼の胃をつかんだなんて皮肉だ。

「遼さん、これからは私があなたの料理を作りますわ!」

清花は涙目で、まるで純粋無垢な白い花のようだった。

遼は彼女の手を取り、心配そうに優しく握った。

「君の手はそんなことをするためのものじゃない」

私は苦笑せずにはいられなかった。じゃあ、私は生まれながらにして料理婦だというの?

遼は忙しさに追われながらも、ようやく時間を作って家に戻った。

家の中は何も変わっていなかった。テーブルには私が死ぬ前に飾った花が、ベランダには私が干した洗濯物が、冷蔵庫には私の作った料理が残っていた。

残念ながら、遼は私のことなど見向きもしない。私の作った料理さえ、助手の手を借りてようやく彼の元に届くのだ。

こう見ると、彼は本当に私を愛したことなどなかったのだろう。

「葵、もう隠れるのはやめろ。折れるときは折れろ」

彼は空気に向かって話しかけたが、何の返事も返ってこなかった。

遼はいつも私に甘やかされていた。こんな仕打ちを受けたことなどなかったのだ。

怒りに任せて、彼は私に関するものをすべて破壊した。

私が育てた花は根こそぎ抜かれ、干してあった洗濯物は無造作に床に投げ捨てられ、冷蔵庫の料理までゴミ箱に捨てられた。

怒りを発散し終わると、彼は私の携帯に電話をかけ、独り言のようにもう一度チャンスをくれると言った。

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