第010話

黒井遼は再び狂ったように、アクセルを踏み込んで私の父のもとへ向かった。

父は彼の執拗な要求に負け、私の墓地へ案内した。

遼は私にプロポーズした時よりも早く跪き、目に涙を湛えていた。

「葵、待っていてくれ。全てを片付けたら、必ず会いに行く！」

父は脇で団扇を煽ぎながら、冷ややかな目で遼の醜態を眺めていた。

遼はすぐに真相を知り、笑いながら泣き、最後には地面に頭を打ち付けて私の許しを乞うた。

遅すぎた愛情など、草よりも軽い。

「母さん、婚約の挨拶に行こう。結婚を承諾したよ」

彼は携帯電話を強く握りしめ、額には青筋が浮かんでいた。

すぐに濑岛清花から電話がかかってきて、言葉の端々に嬉しさが溢れていた。

「遼さん、やっぱり私のことを愛してくれていたのね！」

遼は初めて清花に対して無言を貫き、ただ軽く笑うだけだった。

「ようやく、自分が誰を愛しているのか分かったよ」

結婚式の会場を準備する際、黒井遼は終始傍観者のような態度を取っていた。

濑岛清花が軽く不満を漏らすと、遼はそっけない言葉で一蹴した。

「葵は昔、何も文句を言わなかった」

確かに、当時の私にとって彼との結婚は人生最大の出来事で、細かいことなど気にしていなかった。

遼はタバコを挟み、眉をひそめながら、私との結婚指輪を撫でていた。やっと少し優しい表情を見せた。

「葵、もう少し待っていてくれ」

今となっては、私は彼を待つほど安っぽくはない。

結婚式当日、遼は立派なオーダーメイドのスーツを着ていた。私との結婚式の時のものとは比べものにならないほど高級だった。

しかし、彼が密かに古いスーツを私たちの部屋に掛け、毎日その前で立ち止まっていたことを私は知っていた。

式が始まりスライドショーが流れ始めたが、何かの不具合で突然、濑岛清花の不倫現場の映像に変わってしまった！

映像の中の女性は全裸で、顔には隠しきれない色気が漂い、会場は騒然となった。しかし、遼だけは部外者のように冷静だった。

彼は木のように立ち尽くし、噂話など耳に入らないかのようだった。

昔の彼は体面を最も重んじていたのに......

義母がすぐに駆け寄り、清花のドレスを掴んで何度も平手打ちを食らわせた！

「この小娘が、よくも我が黒井家に入ろうなどと！ 身の程知らず！」

事態は急展開し、誰かがすぐに携帯で動画を撮り