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第173話

しかし、心を動かされつつも、さくらは断った。「陛下の勅命では、3ヶ月以内に夫を見つけるよう言われています。恐らく、爵位を継ぐ者を内定したいのでしょう。ですから、元帥様との偽の結婚は、陛下のお許しが得られないかもしれません」

玄武はさくらがそのように考えるとは予想していなかった。陛下のことをまだ十分に理解していないようだ。少し考えてから、手を軽く押さえて言った。「それは心配しなくていい。陛下には私から話をつけよう。陛下が爵位継承者を内定したいと考えているのは、おそらく北條守のような薄情な男を選んでしまうことを恐れてのことだろう」

前夫を貶めるのは卑劣な手段だが、さくらには理にかなって聞こえるはずだ。

さくらは北條守の名を聞いても、心に波風は立たなかった。しかし、玄武の言葉にも一理あると感じた。

太政大臣家の爵位、そしてその背後にある上原家軍。継承者の選択は慎重にならざるを得ない。

以前、陛下が父に爵位を追贈した際、さくらの将来の夫が継承できると言ったのは、さくら自身が戦場に出て上原家軍の認めを得るとは思っていなかったからだろう。

今となっては、適当な人選はできない。

この3ヶ月は夫を探す期間とされているが、実際には陛下が適切な爵位継承者を探しているのだろう。しかし、陛下は爵位継承に適した人物を探すだけで、さくらとの相性や生涯を共にできるかどうかまでは考えていないだろう。そうなれば、不釣り合いな縁組みになり、互いに不満を抱えることになりかねない。

玄武はさくらの思考の流れを読み取り、彼女の心中を推し量った。「私は、想い人が結婚した後、妻を娶るつもりはなかった。しかし、陛下が賜婚の意向を示された以上、皇弟といえども従うしかない。命に逆らうことはできないのだ。だとすれば、他の誰かよりも、君と結婚する方がいい」

さくらは玄武の長い睫毛の下にある黒い瞳を見つめた。その瞳は、漆黒の夜空のように深かった。しばらくして、彼女は言った。「元帥様、もし私たちが結婚して、途中であなたが好きな女性ができても、その方は側室にしかなれません。私は離縁状は必要ありません。一度離縁を経験しましたから、もう一度離縁するなんて、両親の顔に泥を塗ることになります」

玄武は飛び上がりたい衝動を抑え、冠を軽く押さえながら、さも気にしていないような素振りを見せた。しかし、口元は押さえきれない
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