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第6話

彼は何を勘違いして、芽依が私たちの間で一番大きな問題だと思っているのだろう?

一番大きな問題は、颯太自身にあるというのに!

私はため息をついて、何も言わずに電話を切り、彼をブロックした。

会社に到着すると、森里奈が入口で待っていて、満面の笑みを浮かべながら言った。「北原ちゃん、私たちの上司は本当に素晴らしいのよ。絶対にここに残ってほしい!」

「条件が合えば、そうするわ」

森里奈の上司は20代前半の若い男性で、金縁眼鏡をかけ、端正な顔立ちに明るい笑顔を浮かべていた。

「森さんからずっと聞いてたよ。彼女の隣人が美人で、名門大学卒のデザイナーだって。どんなすごい人が来るかと思ったら、まさか先輩だったなんてね!」

「自己紹介させてもらうよ。僕は吉田哲章、A大学デザイン学部05年卒で、先輩より2年後輩なんだ。もし先輩が僕のスタジオに加わってくれたら、すごく光栄だよ!」

吉田哲章の言葉に思わず笑ってしまった。「私が社会から3年も離れていることを気にしないでくれるならね」

「そんなこと気にするわけないよ!先輩のデザインは前から評判だったからね」

私は最近のデザイン作品を彼に見せた。「これは個人で請け負った案件のデザインです。会社にはいませんでしたが、スキルは忘れていません」

彼は私の作品を見て目を輝かせた。「やっぱり、先輩の実力は間違いないね!うちのスタジオに来てくれるなんて、本当にありがたいよ!」

「給料は月40万円に、さらに歩合もつけるよ。上限はないからね!」

こうして私は森里奈と同僚になった。森里奈は興奮して私の腕にしがみつきながら言った。「やっと憧れの美人に近づけたわ!」

私は笑った。見てごらん、人生って案外悪くない。

森里奈の会社を出たのはすっかり夜になっていた。アパートに戻ると、颯太がそこに立っていた。

彼はどうやら長い時間待っていたようで、足元には吸い殻が散らばり、私を見た途端に立ち上がった。手には花束が握られている。

「全部俺のせいだってわかってる。でも、どうかもう一度チャンスをくれないか?こんな形で終わりにしないで」

「離婚届を渡してから、毎日自分の過ちを反省しているんだ。どうしてこんなことになってしまったのか」

「中に入って話せないか?」

彼は必死に懇願し、目は赤く充血していた。そんな彼を見て、私は心の中でため息をついた
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