第2話

彼らに顔を合わせる前に、私は立ち上がり、急いでトイレに駆け込んだ。

リビングでは、宗真が何度も私を呼んでいたが、私はただ口を押さえて涙をこぼすばかりで、返事をしなかった。

涙を拭いて気持ちを整えて出てきた時には、彼らは楽しそうに談笑しながら、私が作ったお粥を食べていた。

なんて楽しそうな「家族3人」だこと！

私は勢いよく駆け寄り、食卓の前に立って、彼らをじっと睨みつけた。

彼は顔を上げ、困惑した表情で聞いた。「どこ行ってたんだ？さっきずっと呼んでたのに返事がなかったからさ」

依奈は挑発的な笑みを浮かべながら、甘い声で言った。「お姉さん、一緒に朝ごはん食べようよ！」その口調は、まるで彼女がこの家の女主人で、私は物乞いにでも来たかのようだった。

私の顔はきっと凄まじかっただろう。胸の中で怒りが爆発しそうなほど湧き上がっていたのだから。

自分が作った料理を、一口も食べてないのに、なんでこんな奴らに食わせなきゃならないの？

私は彼らの手からお碗を奪い、ゴミ箱に投げ捨てた。「これは私が自分のために作ったお粥よ、あんたたちに食べさせるためじゃない！」

宗真は避けきれず、私の乱暴な行動で袖を汚され、怒りの声を上げた。「箐美、朝から何やってんだ！」

私は気が済まず、依奈の息子が持っていたお碗も奪って投げ捨て、冷たく宗真を見つめた。「あんたが昔の女とどうしようが勝手だけど、私の前に連れてくるなよ。

私が作ったお粥を食べさせる価値なんか、こいつにはない！もちろん、今となってはあんたにもないわ！」

依奈は目を赤くし、立ち上がって弱々しく謝った。「お姉さん、誤解しないでください。私と宗真さんは今はただの友達で、それ以上の関係はないんだ。子供を連れて、お姉さんに会いに来ただけよ」

私は冷たい視線を彼女に投げかけた。「あんたが本当に彼と何もないなら、私に会いに来たなら、呼ぶべきは『お義兄さん』で、宗真さんじゃないでしょ」

彼女は怯えたように身を縮め、再び謝った。「ごめんなさい、お姉さん。つい癖で呼んじゃった。次からはちゃんと『お義兄さん』と呼ぶわ」

宗真は手に持っていたティッシュを投げ捨て、青ざめた顔で私に向かって怒鳴った。「いい加減にしろ、箐美！依奈はお前を気遣って来てくれたのに、何でそんなことするんだ？全く意味分からない！」

私は彼を無視し、依奈に向かってドアを指さし、「息子を連れて、ここから出て行け！」と言った。

依奈は涙を流し、泣き声混じりに宗真に尋ねた。「宗真さん、私、何か悪いことしたかな？だからお姉さんは私をこんなに嫌ってるの？」

宗真は私を押しのけ、依奈のそばに駆け寄り、優しく涙を拭いてあげながら、「お前のせいじゃないよ。お前の姉が分からず屋なだけだ」と慰めた。

そして、私に振り向いて、怒りの目で言った。「箐美、依奈に謝りに来い！」

私は頭を上げ、涙をこらえた。こんな奴らのために泣く価値なんてないと心に誓った。

二人が抱き合う姿を見ながら、私は静かに言った。「今すぐ、二人ともここから出て行け」

宗真は怒りに燃えて叫んだ。「箐美、ここは俺の家だぞ。お前に俺を追い出す資格なんかあるのか？」

確かに、今住んでいるこの別荘は元々白川家が買ったものだ。でも２年前、私が白川家のビジネス上の大口契約を取るために無理して酒を飲み、胃に出血して入院した時、義父がその補償としてこの家を私の名義にしてくれた。だから今、この家は私、桜井箐美のものだ！

私は目を逸らさずに宗真を見つめた。「宗真、どうだい？この家が誰のものか、権利書でも見せてあげようか？」

その言葉を聞いて、彼は当時の名義変更のことを思い出し、一瞬顔を曇らせた。

「それがどうしたんだ？俺はお前の夫だ。お前のものは俺のものでもあるだろ！」

私は鼻で笑って言った。「あんた、まだ自分が私の夫だって覚えてたの？

聞くけど、昨夜は誰と一緒に飲んでたの？一晩帰らずに、誰のベッドで寝たんだ？

写真を見せようか？」

宗真は呆然と私を見つめた。「俺はただ酔っ払ってホテルで一晩寝ただけだ。何の写真だよ？」

私が口を開こうとしたその時、依奈が急いで私を遮った。「お姉さん、私を見たくないなら、Jasonを連れて出て行くよ」

そう言って、彼女は宗真を一瞥し、息子の手を引いて、足早に去っていった。