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第434話

 「みなさん、行きましょう」越人はため息をつき、仕方なく言った。

この時、彼を冷静にさせる方がいいかもしれない。

医療スタッフたちは順番に退室し、文彦は圭介に話しかける勇気がなく、「もう死んでいます。こんなに放置しておいてはいけません。早く霊安室に運ばなければ」と越人に伝えた。

越人は医者の意図を分かっていた。

彼もその懸念を抱いていて、早く遺体安置所に運びたいと思っていた。

圭介が出てこられなくなるのを恐れたのだ。

「全力を尽くします」越人は答えた。

文彦は目を伏せ、「申し訳ありません」と言った。

越人は心の中で、これが本来自分の仕事だと考え、面倒とは言えないと思った。

圭介が全員を追い出した後、彼は一人手術台の前に立っていた。

周囲は静まり返り、まるで世界に彼一人だけが存在するかのようだった。

越人は外でただ焦りながら待っているしかなかった。

明け方から日が沈むまで、数時間が経過したが、圭介は出てこなかった。

越人は外でじれったく感じていた。

その時、誠がやって来て尋ねた。「状況はどうだ?」

越人は彼を見つめ、目が赤くなっていた。そして香織が爆破で死んだことを伝えた。

誠は一時的に受け入れられなかった。「どうしてそんなことが?準備をしていたのに、どうして事故が起きた?それじゃあ……」

圭介はどうやって向き合うのか?

「彼は全員を追い出して、今も手術室の中にいる。誰も邪魔する勇気がない」越人は答えた。

「こんなことでは解決にならないな」誠は言った。

越人も理解していたが、今別の方法があるのか?

誠はベンチに座り、頭を掻きながら「どうしよう」と悩んでいた。

越人も何のアイデアは思い浮かばなかった。

「子供と恵子さんは大丈夫か?」彼は尋ねた。

彼らの安全が少しでも彼を安心させるのだ。

越人の言葉は誠に何かを思い出させたようで、彼は急に顔を上げて言った。「方法がある!」

「どんな方法?」越人は尋ねた。

「香織の他に、彼にはまだ親族がいる」誠が言った。

越人はすぐに反応した。「双のこと?」

「そうだ、双は彼の息子だ。彼がどんなに悲しんでも、香織の死を受け入れられなくても、子供を無視することはできないだろう」誠が言った。

越人はそれが一理あると思ったが、心配もあった。「ここは病院だ。双を死体の近くに連れて行くのは良
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