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第19話

 どうせ私は初めから圭介が彼に用意したものだ。

 香織の心は冷え切った。

 やはり、圭介の仕業だ!

 「俺はここにプライベートルームがある。そこに行って、ゆっくり楽しもう。だいたい、こんなに可愛い子を圭介が自分で楽しまずに、どうして俺にくれたんだ?もしかして、本当に女が嫌いなのか?」田中は香織を見て笑った。

 圭介にはずっと彼女がいない。知っている人はみな、彼の周りには男しかいないことを知っている。

 多くの人が彼を性不能だと言ったり、同性愛者だと言ったりする。

 とにかく、普通じゃないのだ!

 香織は冷笑した。彼は女が嫌いなわけではない。ただ、自分を嫌っているだけだ!

 彼が美穂と元彼の関係に腹を立てた様子を見れば分かる。

 あんなに怒るのは、結局彼が気にしているからではないか?

 「だが、本当に水原さんには感謝しないと。」田中は笑った。「彼がいなかったら、お前と知り合えなかったからな。」

 あの日、彼は傷つけられたが、この女がナイフで脅した冷静な姿が彼の印象に強く残っている。

 普通の女なら、嫌なら大声で叫ぶだけではないか?

 だが、彼女は違った!

 香織の目には冷たい光が宿り、歯を食いしばって、「私も彼に感謝しなければならないわね」と言った。

 田中の目が輝いた。「何だ、俺と一緒に来る気になったか?」

 香織はうなずいた。「そうよ…」

 言葉が終わらないうちに、頭を下げて彼の腕に噛み付いた。田中は痛みに叫び、香織はその隙に彼の顔に頭をぶつけた!

 田中の鼻から血が出た。「うっ!」

 彼は痛みで顔を押さえた。

 香織はその隙に逃げ出した。

 彼女は必死で走った。もし捕まったら、ひどい目に遭うことはわかっていた!

 成功しなければならない。

 彼女は風のように速く走りながら、田中が追ってこないか振り返った。

 誰も追ってこないとわかっても、気を緩めることなく、人が多い場所にたどり着くまで走り続けた。

 汗が髪を濡らし、力尽きた彼女は路肩に座り込んだ。

 息を切らしながら、通り過ぎる人々を見つめ、急に顔を覆って泣き出した。

 彼女は唇を強く噛みしめ、圭介を憎んだ!

 彼は何度も何度も彼女を害した。

 もう、彼と一緒にはいられない。

 さもなければ、いずれ彼に殺されてしまうだろう!

 この男から離れなければ
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