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第3話

父が来た。彼は顔色が重々しく、手に何かの書類を持っている。

私は機転を利かせて急いでうなずき、出て行った。父は一番偉い医者だから、きっと兄を救う方法があるに違いない。

「もうドナーが見つかった」

私が出たばかりで、中から父が兄に言う声が聞こえた。

「本当なのか?適合はどうなんだ?」

お兄ちゃんの声は、嬉しそうに弾んでいた。急いで尋ねた。

「そう、そして彼女は同意しました。すぐに手術を手配できる」

父の声はいつも通り冷静だった。私はその言葉を聞いて、胸がいっぱいになった。よかった、これでお兄ちゃんが助かるんだ。

私は屋根裏の部屋で日記を書いていた。「今日、お兄ちゃんの病気が助かる道が見つかった。ドナーが何なのかはよくわからないけど、それがあればお兄ちゃんは助かる。嬉しいな。

お兄ちゃんが元気になったら、たくさん美味しいものを作ってあげよう。お母さんが日記に書いてた。私が生まれる前、兄は私を一生守ると言っていた。私は母を信じて、兄も信じている。彼らはきっと私を許してくれるだろう」

そう書いていると、突然ドアがノックされた。私は急いで立ち上がり、ドアを開けると、そこには厳しい表情の父が立っていた。

父は無言で何かを私に渡してきた。私はそれを開けてみると、そこには「適合成功」という文字が書かれていた。

一瞬、頭が真っ白になった。名前は消されていたけれど、日付は覚えていた。あの日は父が私を病院に連れて行った日だ。

つまり......お兄ちゃんを救えるのは、私だったんだ。

バタン!

父の大きな体が突然私の前にひざまずいた。私はびっくりして、反射的に後ずさった。でも最後に私は父を支えようと手を伸ばした。

「お父さん......何をしているの?立って......」

「賠ちゃん......」

父は私の名前を呼んだ。涙が声に混じっていた。「お願いだ、彼を......お兄ちゃんを助けてくれ......」

私は呆然と立ち尽くしていた。指が震えて、何も言えなかった。父が初めてこんなに優しくて私の名前を呼んだのは、お兄ちゃんを助けるためだった。

兄は病気になって、私だけが彼を救うことができる。もし私が彼を救ったら、兄は私の名前を呼んでくれるだろうか?

そうだ、彼らの言う通り......私はどうやら、彼らにずっと命を借りているようだ......でも残念なことに、彼らは一度も私を家族として見てくれなかった。

「お父さん」私は父の肩にそっと手を置き。私の印象では、父はずっと大きくて、小柄な私に気づくことはないほど大きかった。

でも今日、私は気づいた。彼は私に気づくことができるのだ。ただ彼は決して腰を曲げないだけだ。

「私は手術に同意します。でも、一つお願いを聞いてくれますか?」

手術台に横たわり、私は父がメスを手にしているのを見つめていた。隣には眠っているお兄ちゃんがいる。

彼は血を見るのが苦手で、血を恐れて、これらの血生臭い光景を見ることができない。

そして私は意識を保たなければならない。麻酔を使うと、腎臓に良くないのだから。お兄ちゃんには最良の腎臓が必要だった。

目の前には20センチ以上もある大きなメスが見える。怖くて仕方がなかったけれど、なんとか落ち着こうと自分に言い聞かせた。

お兄ちゃんを助けるためなら、この痛みもすべて意味がある。父も腎臓をひとつ失っても、死にはしないと言っていた。

5時間が過ぎ、私は自分の腎臓が少しずつ取り出されていくのを見ていた。それが最後にはお兄ちゃんの体に移植されるのを見届けながら、私は自分の意識がどんどん薄れていくように感じて、息が苦しくなってきた。

父がお兄ちゃんの手術を終えた後、安堵のため息をつき、優しい表情でお兄ちゃんを見つめているのを見た。私は手を伸ばした。彼らにどうしても触れたかった......

でも......力が入らない......綾子と約束していたんだ。今度、家に遊びに来てもらうって。お父さんとお兄ちゃんも私を許してくれてから、綾子に紹介したかったのに。

お父さん......振り向いて私を見て......私、痛いよ......

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