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第87話

土屋じいさんは焦った口調で「若奥様!早く戻ってきてください。お爺様が大変お怒りで、若様に殴りかかろうとしています。若奥様にしか止められません!」

「何?」

半分聞いたところで、私はすぐに立ち上がり、コートを手にかけて外に向かった。

江川宏のことを心配しているわけではなかった。

お爺さんには江川宏だけでなく、他にも孫がいるが、結局一番可愛がっているのは彼なのだ。手を出すとしても本気ではないし、命までとったりはもちろんしない。

ただ、お爺さんの体を思うと、やはりあまり怒らせないほうが良かった。何か起きてからでは遅いのだ。やむを得ない限り、土屋じいさんもこんなに焦ったりはしない。

土屋じいさんは言った。「戻ってきてみればわかります!」

心の中でどう思っていても、江川家の邸宅に到着した時、私はたじろいでしまった。

書斎に着くと、かつて風光明媚な姿だった江川宏が、今は地面に跪き叩かれていた。立てずにうずくまり、痛みで額に青筋が浮き出ていた。黒檀のテーブルの縁に手をかけて、なんとか倒れないでいた。

さらに驚いたことに、そこにはアナの姿もあった。

私は口を開こうと思っていたが、いつも私に親切に接してくれるお爺さんが土屋じいさんに厳しい目を向けた。「南に電話をかけたのはお前か?」

「……はい」

土屋じいさんはこう答えるしかなかった。

「いつも自分で勝手にやりやがって!」

お爺さんは怒り狂って叫んだ。「お前ら全員出て行け!」

「お爺さん……」

私はやはりお爺さんの体が心配で、諌めようと思った。

お爺さんは手を左右に振って言った。「心配するな、私はこんなんじゃまだ死なん。外で待ってなさい」

そう言われて。私は土屋じいさんと共にそこを離れるしかなかった。

 後ろから、お爺さんの冷たい笑い声が聞こえてきた。「お前は本当にお前の母親と同じように察しが悪いやつだな、さっさと出て行け!」

江川アナは優しい声で言った。「お爺さん、宏にこんなに当たって何の意味があるの?清水南が自分から離婚を言い出したのよ。それに、彼女には家をあげたんだから、十分すぎるくらいよ。宏はあなたの孫でしょ、南はただの他人よ」

「黙ってろ!」

お爺さんは怒り狂い、江川宏をにらみつけながら怒鳴りつけた。「これがお前の好きな女か?節操もなく、こせこせしているのは言うまでもなく、人の話すら
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