第325話

服部鷹がこのような表情を見せるのはこれが初めてだった。

緊張なのか、興奮なのか、慌てているのか、何とも言えなかった......

とにかく、普段の彼の傲慢な姿とはまったく合わなかった。

まるでこの瞬間、彼の中に昔の江川宏を見たようだった。

一瞬、私はさらに冷静になり、冷酷ささえ感じて、芽生えかけた感情を抑え、すばやく振り向いた。

「うん、続けて」

服部鷹は電話を切ることなく、一歩前に進み、片手で私を抱きしめ、私がどう抵抗しても、しっかりと束縛された。

向こうが数言言った後、彼は淡々と言った。「気をつけて、誰かに騙されないように。人をなだめ終わったら、すぐに行くから」

話が終わると、彼は電話を切り、携帯をズボンのポケットに放り込み、大きな手で私の頬を掴み、形を歪めるようにしたが、彼は悲しげに言った。「なんで逃げる？俺の言ったこと、聞こえた？」

「放して」

「......プッ」

私が彼に頬を掴まれている様子が少し滑稽に思えたのか、彼はクスッと笑い、聞かずにまた掴んで言った。「まず答えてくれ、答えが満足できれば、放す」

私は彼の手を叩いて、無理やり離させ、軽く唇を抿いて、心を抑えた。「服部鷹......服部さん、私はあなたとは違う、遊びたくないし、遊ぶ余裕もない」

「遊び？」

服部鷹の顔色が少し変わり、舌先で不満そうに歯をつついた。「君は俺が遊んでやってると思ってるの？」

「違うの？」

雪がちらちらと降り始め、私は寒さに首をすくめた。「あなたが言った通り、この二日間、藤原お嬢様の情報がなければ、待たないと言ったけど、さっきは情報があったでしょう？でもあなたはまだ私に尋ねてる。私をサブだと思ってるの？それとも彼女？」

このサブはもちろん、私のことだった。

この二日間、おばあさんも服部花も、私にたくさん言ってきた、私はほとんど信じかけた。しかし今、この瞬間、目の前の傲慢な男を見つめた。

彼の条件なら、家柄の良い美しいお嬢様がたくさん寄ってくるから、この機会はきっと、私には回ってこないんだ。

私と彼の差は、以前の江川宏との間よりもさらに大きかった。

服部鷹は酒の匂いを漂わせているが、目は驚くほど澄んでいた。彼は唇を引きつらせ、いつも通り心のこもらない口調で言った。「君は俺を江川宏だと思ってるのか？」

「わからない」

寒さに鼻をすすり、