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第330話

心の中が急に酸っぱくなった。

まるで何かに突き刺されたように。

私はドアの方を指差し、冷たく言った。「出て行って!」

「清水南、何でそんなに我儘なの?ちゃんと話をしようよ」

「あなたはちゃんと話したの?」

私は彼を睨み付けた。「何の権利があって私を責めるの?あなたの婚約者はどうするの?私に会う暇があるの?」

「酔っ払った上に、そんなに刺々しいことを言うか?」

彼は顎を指で触り、最後に低く笑い、半分ひざまずいて私の前に来て、声を穏やかにした。

「わかった、俺が一時の感情で、ちゃんと話せなかったのは認める。罰を受けるよ」

私は無意識に聞いた。「罰って何?」

彼は眉を上げ、ちょっと小憎たらしい笑みを浮かべて言った。「もう一度キスされるとか?」

「......」

その瞬間、彼の耳は赤くなっているのに気がついた。

私は頭を振って、アルコールに支配されないように必死に彼を見つめた。「あなた、どうして来たの?」

「君に説明をしに来た」

私は眉をひそめた。「私たちは昨晩すでに話したのでは?」

「それは君の一方的な思い込みだった」

服部鷹は私に温水を注ぎ、何かを携帯で送信した後、話を続けた。

「彼女は藤原家に送っておいた。清水南、昨晩君に待たないと言った時、実はもう考えてた。俺が心変わりしただとか、クズだとか言われても構わない、俺は本当に君を好きになった。

俺は同時に二人を好きになることはできない。君に言った以上、他の人とはぐちゃぐちゃにならない」

私は手を握りしめた。「じゃあ藤原奈子はどうするの?」

「彼女が本当に奈子かどうかを先に確認する」

服部鷹の眉間には微かな陰りがあった。「様々な証拠が彼女を指し示してるが、俺とおばあさんは彼女がそうではないと考えてる。親子鑑定をもう行ってる」

私は唇を噛んだ。「もし彼女が本物だったら?」

「君に会いに来る前、おばあさんと婚約を解消する話をしてた」

彼は私の乱れた前髪を耳にかけ、褐色の瞳で私を見つめた。「彼女がどうであれ、俺は婚約を解消する。清水南、俺を信じてみてくれないか?」

彼の口調はいつもの気楽さがあった。

静まり返った部屋には、なんとも言えないものが広がっていた。

私は素早く視線を逸らして、言った。「また後で考える」

あの人は、何度も私に信じさせてきた。

彼も江川アナと結婚し
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