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第337話

藤原奥さんがそれを聞くと、視線を会場内に一巡させ、すぐに藤原当主を見つけて引き連れて迎えに行った。

しばらくして、宴会場の入り口で騒ぎが起こった。

江川宏、山名佐助、藤原家の三人が一緒に入ってきた。

江川宏は黒いコートを身にまとい、その端正で冷厳な顔立ちと落ち着いた足取りから、まさに支配者の雰囲気を漂わせていた。

山名佐助も南希を訪ねた時と同様に江川宏の半歩後ろに立ち、二人の間には確かな親しみが感じられた。

それに加えて、藤原奥さんが人を迎えに行く前に話していたこともあった。

その場にいたのは皆、百戦錬磨の人々で、これを見れば、事の次第はすぐに分かるだろう。

江川宏こそがRFグループのボスなんだ。

他でもなく。

かつて藤原家に婚約を破棄された江川宏その人だった。

今や藤原家は江川宏を上客として迎え、少しも怠ることなく厚遇していた。

どんなに悔しくとも、飲み込まねばならなかった。

この関係性が明らかになったことで、場の雰囲気は一気に不穏となり、誰もが簡単には江川宏に話しかけようとしなくなった。

藤原家の三人はそれぞれ異なる表情を見せていた。藤原星華は少し興奮気味で、藤原奥さんも抑えきれないほどの喜びを隠しきれない様子だが、藤原当主だけは居心地悪そうにしているものの、人前で声を上げることはしなかった。

その時、噂好きな人が藤原奥さんに小声で尋ねてきた。「その江川社長、今日はお嬢さんのために来たんじゃないかしら?前にあなた方が婚約を破棄したのに、まだ彼女への想いを断ち切れないみたいで......」

「あら、もう」

藤原奥さんはすでにその考えにすっかり取り憑かれていたようで、嬉しさを隠しきれずに言った。「過去のことを持ち出さないでよ。私が少し感情的になりすぎただけで、もう少しで星華がこんな素晴らしい縁を逃すところだったわ......」

「もういいだろう!」

藤原当主はこれ以上恥をかきたくなく、声を低くしてて遮り、江川宏に向かって言った。「江川社長、RFグループがあなたのものだとは思いつかなかった。まさに若い世代の台頭だな!どうか今後、ビジネスの面で藤原家に少しでも情けをかけていただければと......」

その言葉には感嘆も含まれていたが、江川宏への警戒心も滲んでいた。

藤原がRFグループの連続した圧力に耐えられなくなりつつあるのは明白
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