共有

第5話

しかし、私はすでに食べ終わっていた。一方、慶太の茶碗にはまだほとんど手をつけられていなかった。

私はもうこれに慣れていた。

慶太は私の部屋で寝て、私は祖父の部屋で寝た。

夜中になると、膝が灼熱のように痛み、背中も同じだった。

そして頭もぼんやりしてきた。

再び目を開けると、白い天井が目に入り、消毒液の強い匂いが漂ってきた。

なぜここにいるのかは気にせず、ただ仕事に遅刻すると、初日から遅刻してしまうと思った。

眠っている慶太を起こさないよう、そっと靴を履いた。

「どこに行くんだ?」

ドアのところまで来たとき、慶太の寝ぼけた声が聞こえた。

「仕事を見つけたんです。遅刻しそうで」正直に答えた。

「お前、熱があるのを知っているのか?」

慶太は少し不満そうだった。

私が病気になって、彼が医療費を払ったからだろうか。

「佐藤さん、ご心配なく。給料が出たらすぐに医療費をお返しします」そう言って深々と頭を下げ、誠意を示してから急いで出て行った。

幸い、間に合った。

今日は2月14日で、花屋は賑わっていた。

私は今のところ何もできないので、お金を受け取るだけの仕事だった。

小さな店だが、店主の腕がいいので、花を買いに来る人が絶えなかった。

ただ、まさかここで「知り合い」に会うとは思わなかった。

藤原愛が慶太の腕を組んで、笑いながら入ってきた。

藤原愛は当時慶太が連れてきた彼女だ。

「姉さん、義兄さん」店主が近寄ってきて、入口の二人に礼儀正しく挨拶をした。

私の頭が真っ白になり、反応ができなかった。

店主は藤原愛の弟?

またドラマのような展開だ。

藤原愛のせいで3年間冤罪を被ったのに、今は彼女の弟の下で働いている。

なんて皮肉な話だろう。

藤原愛も私に気づき、驚いたように慶太の胸に身を寄せた。

「旭、どうしてあの子がここに?彼女が......あの時の......」藤原愛は震える指で私を指した。

藤原旭は信じられない顔で私を見た後、嫌悪の表情に変わった。

彼に引っ張り出され、すべてが突然で、身構える間もなく、私は地面に押し倒された。

どうやら失業したようだ。

慶太はただ冷たい目で見ているだけだった。

私は立ち上がり、みすぼらしい姿で逃げ出した。

古い家に戻り、祖父の部屋に隠れた。

ここでしか安心感を得られないようだった。

この件で、また仕事を探さなければならなくなった。

そして、前借りした1万円も返さなければならない。

誰にも借りを作りたくなかった。

何日も苦労して、ようやく見つかった。

皿洗いの仕事だ。

少し疲れるが、忙しくて充実していた。

このまま平穏に過ごせると思っていた。

でも、私が幸せになるのを見過ごせない人たちがいた。

「おや、これは戸川氏のお嬢様じゃないの?いや、誰からも相手にされないペットか」

ホールマネージャーが洗った皿を消毒室に運ぶよう指示した。ロビーを通る時、数人に道を遮られ、嘲笑的な言葉を浴びせられた。

彼女たちは大学の同級生だ。

同時に藤原愛の手下でもある。

今、藤原愛も彼女たちの後ろで様子を見ていた。普段の白蓮花のような姿はどこにもなかった。

私は彼女たちを無視しようとした。トラブルは避けたかった。

「誰が行っていいって言った?」突然、誰かが私の髪を引っ張り、頭皮がビリビリした。

手の中の皿がガチャンと床に落ちた。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status