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第11話

彼の言葉を途中で遮った。「嘘よ。先生は今はとても良くなったって」

この表情を見ると、嘘をつくのが申し訳なくなる。

「お姉さん、意地悪になったね」彼は不満そうな顔をしたが、それでも私を抱き上げて二回転した。

「じゃあ、お姉さんは僕の願いを聞いてくれる?」少年の目は期待に満ちていた。

「何の願い?」私は彼に向かってまばたきした。

「僕の彼女になってほしいんだ」田中優作がもう一度言った。

「でも私はまだ完全に治っていないわ。もし再発したら?」

「関係ない。僕はただお姉さんを愛して、幸せにするだけ。お姉さんが幸せなら、病気も良くなるよ」彼は甘えるように私を抱きしめた。

「じゃあ、しょうがないわね。承知したわ」私も手を伸ばして彼を抱き返した。本当は少しも無理なんかしていない。ずっと彼に申し訳なかったのは私の方だ。

田中優作と手をつないで帰ろうとしたとき、慶太を見かけた。

彼は赤い目で私たちを見ていた。

彼を見なくなって2、3ヶ月になるだろうか。最後に会ったのは、佐藤のおばあさんが亡くなった時だった。慶太が私を迎えに来てくれて、それ以来会っていない。

ついでに、以前彼がくれた医療費や、クレープの屋台も返した。

彼がずっと私を見守っていて、会いに来てくれたことは知っている。でも、私が自殺をほのめかすたびに、彼は近づくのをやめた。

「幸子、この人は?」慶太が赤い目で私に尋ねた。彼は全て分かっているはずなのに。

「僕の彼女だよ」田中優作が先に答え、手を挙げて繋いだ手を見せた。

「彼はお前に優しくしているか?」

「ええ」

「幸子、お前が俺を愛していた頃の姿を知っている。今はもう俺を愛していないのが一目で分かる。ただ認めたくなかっただけだ。幸せになってくれ」

「あなたも」

......

後に聞いた話では、慶太は山村で教師をしているそうだ。

私は、ソファーに座って目の前の男性を見つめていた。

「前に言ってたわね。私の体の状態を知っていたって。まだ教えてくれていないわ。どうやって知ったの?」

「あの日、バスケをしていて足首を捻って病院に行ったんだ。偶然、お姉さんの隣の病室だった。通りがかりに聞こえたんだ」

「気になって、窓ガラス越しに覗いてみた」

「見た瞬間に、全部分かった」

なんてさりげない説明なんだろう。

「それだけ?」私は信じられ
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