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第8話

指を動かして、ベッドの端で寝ている慶太を起こそうとした。彼が私の手を押さえつけていて、しびれていた。

「目が覚めたか?気分はどうだ?お前、ショック状態だったんだぞ、分かってるか?」

......ショック状態だったのに、どうして分かるはずがあるの?

でも、目の前のこの人は本当に慶太なの?

顎にはヒゲが生え、目には赤い血管が浮いている。

あの高慢で気品があり、落ち着いた慶太とは別人のようだ。

話そうとしたが、全く力が入らなかった。結局諦めて、ただ横たわっていた。

医者と慶太に好きにさせた。

私はもう4日も眠っていたらしい。

慶太は4日間私を見守っていた。

午後、医者が人工呼吸器を外してくれた。

やっと話せるようになった。

「先生は、私があとどのくらい生きられるって?」自分の体のことは分かっている。もう長くないはずだ。

慶太が粥を食べさせる手が一瞬止まり、しばらくしてから言った。「半年......もしくはそれより短いかもしれない」

私は安堵の笑みを浮かべた。

よかった、おじいちゃんに会えるね。

「肺がん?」疑問形で言ったが、間違いなくそうだと確信していた。

結局、後になって賢くなって、あまり殴られなくなったけど、それでも血を吐くことが多かった。

それに、うつ病も重なっているし。

慶太はうなずいた。

「仕事に行ってもいい?つまり、あなたの奥さんたちに邪魔されずに過ごせる?」彼らに邪魔されなければ、安心して働ける。

藤原旭にまだ1万円の借金がある。

死んでしまえば返さなくていいと思っていた。

でも、まだ生きているなら返そう。彼らに借りを作りたくない。

彼らというか、彼の姉の藤原愛が私に借りがあるのに。

「彼女は俺の妻じゃない」慶太は眉をひそめ、藤原愛との関係を否定した。

妻かどうかなんて関係ない。彼女たちに邪魔されたくないだけだ。

私はいい通りの屋台で、クレープを売り始めた。

最初はアルバイトをしようと思ったけど、慶太が許してくれなかった。

彼が許さないことは、誰も変えられない。

二つの選択肢をくれた。自分で店を開くか、家にいるか。

結局、私の大好きなクレープを売ることにした。

限られた時間で、自分のやりたいことができるのも悪くない。

道具などは全部慶太が用意してくれた。

少し不安そうに屋台の前に立っていた。
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