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第406話

  由佳が料理を待っていると、テーブルの上に置いてあったスマホが鳴り、画面に清次の名前が表示された。

「おばさん、おじさんからの電話だよ」鋭い目をした山口沙織がそれを見つけた。

由佳は一瞬間を置いて、電話を取って通話を始めた。「もしもし?」

「今、家にいるのか?俺が沙織ちゃんを迎えに行くよ」

由佳はスマホを少し遠ざけ、隣の山口沙織に向かって言った。「沙織ちゃん、おじさんが迎えに来るって。夕飯の後一緒に帰る?それとも食べ終わったらおじさんと帰る?」

山口沙織は少し考えるふりをして、素直に答えた。「おばさん、今日はすごく疲れてるよね。夕飯を食べたらおじさんと帰るよ」

「わかった、じゃあ彼を呼ぶわね」

由佳は再びスマホを耳に当て、「今、南本町の『荷亭』っていうレストランにいるの。まだ料理は出てないわ」と伝え、時間を確認してから「6時半頃に来て」と言った。

清次は少し間を置いて、「俺は今、すぐ近くにいるから、今から行くよ」と言い、由佳が返事をする間もなく電話を切った。

由佳:「……」

焼き魚はすぐにテーブルに運ばれ、他の付け合わせも一緒に出された。

このレストランの焼き魚は有名で、外はカリッと中は柔らかく、味も抜群だ。

山口沙織は大満足で食べていたが、彼女は任務を忘れずに、ずっとレストランの入口を気にしていた。

夕飯が半分ほど進んだ頃、清次がレストランに入ってきた。

山口沙織の目が輝き、すぐに清次に向かって手を振った。「おじさん、こっちだよ!」

清次は遠くから二人の姿を確認すると、美人と可愛い女の子が並んで座っており、その美しい顔立ちがとてもよく似ていて、まるで母娘のように見えた。

「もし、本当にこの子が自分と由佳の娘だったらどれほど良かっただろう」と清次は思い、口元に微笑みを浮かべながら二人のテーブルに近づいてきた。

鍋に残っている魚を見て、「まだ食べ始めたばかりか?」と聞いた。

「うんうん」と山口沙織が答えた。

由佳が口を開く前に、山口沙織が続けて言った。「おじさん、もう夕飯食べた?一緒に食べる?この焼き魚すごく美味しいよ!」

清次は二人の向かいに座り、由佳を見ながら微笑んで、「まだ夕飯食べてないんだ。一緒に食べてもいいかな?」

由佳は冷たく「嫌だ!」と二文字だけ吐き出した。

「おばさん、おじさん
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