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第405話

 山口沙織は説明した。「おばさん、彼は私のお父さんじゃなくて、おじさんなんです」

「ああ、そうなのね……」その女性は少し気まずそうに顔を背けた。

清次は、骨を取り除いた魚の身を由佳の器に入れて、優しく言った。「話ばかりしてないで、食べなさい」

由佳は彼を一瞥し、無表情で箸を置いて言った。「私はもう食べ終わったわ。あなたも来たことだし、ゆっくり食べて。私は先に帰るわね」

そう言って、山口沙織に別れを告げた。「沙織ちゃん、今日用事があるから先に行くわね……」

山口沙織はがっかりした顔をして、「おばさんと離れたくない。それに、おばさんは魚を全然食べてないから、きっとまだお腹いっぱいじゃないよ」

「おばさんはもうお腹いっぱいよ……」

由佳はカメラを買ったからには、観光地で写真を撮って、腕を磨きたいと考えていた。それなら、山口沙織と一緒に虹崎市を散歩しながら写真も撮れるので、一石二鳥だ。

清次は箸を置き、眉をひそめ、暗い目をして言った。「そんなに俺に会いたくないのか?」

「私が社長に会いたいかどうか、あなたにはわかっているでしょう?」

清次:「……」

由佳は今や彼に対してどんどん遠慮がなくなっている。

「そんなに攻撃的にならなくてもいいだろう。もう少し座って、食べればいいじゃないか」

「まだ必要あるの?」

清次:「……」

清次は由佳に言い返され、何も言えなくなった。

彼は、彼女にこんな一面があるなんて知らなかった。

結婚する前は、彼女はいつも彼に対して礼儀正しかったし、結婚後も彼に従順だった。 彼は感じていた。

彼女は彼のことを好きではなかったとしても、穏やかに一緒に過ごそうとしていたことを。

でも今や子供を失い、離婚した彼女は、もう彼に従うことはなかった。

由佳は清次を無視し、山口沙織に言った。「おばさんは先に行くわね」

「おばさん、明日も一緒に遊びたいな、いいでしょう?」山口沙織はお皿から顔を上げ、汚れた口元がまるで小さな猫のようで、大きな瞳をパチパチと瞬かせた。

理性的には、由佳は山口沙織とあまり親しくしない方が良いとわかっていた。清次とまた絡むのが嫌だったからだ。

しかし、感情的には、山口沙織のことをどうしても拒むことができなかった。

きっと、自分の子供を失ったからこそ、子供には特
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