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第402話

 山口沙織は元気よく「うん!」と返事をし、由佳は車の鍵を手にして外に出た。

虹崎市はJ県の県庁所在地で、政治や経済の中心であると同時に、観光業も発展しており、全国的に有名な観光地がいくつかある。休日になると多くの観光客が訪れる場所だ。

由佳は山口沙織を連れて虹崎市の二つの観光地を回り、たくさん写真を撮り、ついでにその周辺も散策した。

山口沙織は元気に飛び跳ね、たくさんの記念品を買って、「おばあちゃんやクラスのみんなにあげるんだ」と嬉しそうに言った。

お昼になり、由佳は彼女を連れて観光地近くの少し有名なレストランで食事をすることにした。

二人は窓際の席を選び、外の景色がよく見える場所に座った。

席が少し高かったので、由佳は山口沙織を抱き上げて座らせた。彼女の短い足が宙に浮き、前後に揺れていた。

由佳は彼女の面倒を見やすいように、同じ側に座り、相談しながらいくつかの料理を注文した。

山口沙織はロサンゼルスの中華街で暮らしていたため、中華料理には慣れていたが、やはり海外と比べると国内の料理は種類が豊富だった。

この昼食で、彼女はまるで美味しいものを目の前にした子猫のように、夢中で食べ続け、顔中を汚してしまった。

食べ終わる頃、由佳は彼女を連れて洗面所に行き、簡単に手や顔を洗ってあげた。

席に戻り、二人は休みながら一緒にカメラの写真を見ていた。

ふと、テーブルに置いた由佳のスマホが光り、通知音が鳴った。

由佳はスマホを開いて見ると、斎藤颯太からのメッセージが届いていた。「お姉さん、もう昼ご飯食べましたか?」

その後、彼は写真も送ってきた。そこには弁当が写っていて、「僕、今山口氏グループに入社しました」と書かれていた。

由佳は思わず眉を押さえた。

斎藤颯太、どういうことなの?

彼女は、離婚したことを知った斎藤颯太が諦めると思っていたが、まさかまだ続けるつもりなのか……。

もしかしたら、ただ仕事の相談かもしれない。彼は彼女が山口氏グループにいたことを知っているので、その関係で何か聞きたいことがあるのかもしれない。

山口沙織は由佳のスマホ画面をじっと見つめていた。彼女は文字もかなり読めるので、「斎藤颯太」という名前を見て、男だとすぐに分かった。

すると、敵意を込めた表情になった。絶対に叔父さんからおばさんを奪おうとしてる人だ!

由佳が返信
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