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第386話

由佳は視線をそらし、静かに遠くを見つめた。「私に時間を無駄にしないで」

「彼は浮気したんだろう?それでも彼のことが好きなのか?」

「彼が好きかどうかは関係ない。今は結婚生活を終えたばかりで、新しい恋愛に入る余裕なんてない」

「君を待つよ。君が前の結婚の影響から抜け出すのを待つ」総峰はきっぱりと言った。少しの迷いもなかった。

「もし一生抜け出せなかったら?」

「それなら一生待つ!」

由佳は少し頭が痛くなった。

彼女は冗談を言っているわけではなかった。

最初の結婚が彼女をすっかり疲れさせ、再婚する気などまったくなかった。むしろ、一生結婚しないかもしれないとすら考えていた。

一人で過ごすのも悪くなかった。

それに今は、他のことを考える余裕はなかった。彼女が今望んでいるのは、ただ父親の仇を討つことだけだった。

由佳が何か言おうとしたその時、突然拍手の音が聞こえてきた。

清次が拍手をしながら歩いてきて、由佳と総峰の間を見て、冷ややかに笑った。「一生待つだって?感動的だね!」

由佳は清次を見て驚いたが、彼の皮肉を聞きたくなくて、総峰に向かって言った。「行こう、食事に戻ろう」

「行こう」総峰も清次を無視し、由佳と一緒に個室へ向かった。

二人に無視されたことで、清次の顔色は瞬時に青ざめ、由佳が目の前を通り過ぎたとき、彼は彼女を呼び止めた。「由佳!」

由佳が無反応だったので、清次は怒りに震え、拳を握りしめた。「ちびはもういらないのか?」

由佳は足を止め、怒りに満ちて清次の前に立ち、「ちびをどこに連れていったの?」

清次は薄笑いを浮かべた。「ちびは動物病院にいるよ」

「じゃあさっきの言い方は何なの?」

「今すぐ一緒にちびを迎えに行くんだ。もし君が行かなければ、二度とちびには会えないかもしれないぞ」

由佳は怒りで爆発しそうになり、清次を怒りの目で睨みつけた。「清次!ちびを使って私を脅すなんて、卑怯だし最低だわ!」

由佳にとって、ちびはただ一ヶ月しか一緒に過ごしていない子猫ではなかった。彼女が絶望し、何もできない時に、ちびは彼女に生きる希望を与えてくれた。

極端に言えば、ちびは彼女にとって子供のような存在だった。

清次は眉を上げ、「で、迎えに行くのかどうか、はっきりしてくれ」

由佳は清次を睨みつけ、歯を食いしばった。

深く息を吸い、総峰に
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
にゃんこの名前は「たま」だったはず…… この男、もはや憐れだなー・・・笑
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