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第391話

由佳が気づいた時には、ちびの鋭い爪でベッドシーツに糸が出てしまっていた。

ちびは脚が短くて、ベッドに飛び乗ることができなかったのだ。

由佳は布団を持ち上げてベッドに入って、ちびがベッドの上を這い回るままにして、電気を消して寝ることにした。

翌朝8時半、ちびに少し食事を与え、エリザベスカラーを装着させた後、由佳は外出した。

8時50分、由佳はカフェに到着し、携帯を確認してから、隅の席に座り、健二に「到着しました」とメッセージを送った。

健二からすぐに返信があった。「少し待って」

7、8分ほど経った9時頃、カフェに一人の男性が入ってきた。彼は年齢が30代半ば、茶色のレザージャケットにワークパンツを履き、サングラスをかけていた。髪は少し長めで、しばらく切っていないようだった。

その男性はカフェの入口で足を止め、周囲を見渡した。

由佳と目が合うと、彼はそのまま由佳の席に向かって歩いてきて、向かいの椅子を引いて座った。「由佳さん?」

「健二さん?」

「そうだ」健二は頷き、サングラスを外して机の上に置いた。

由佳は彼をちらりと見て、「健二さん、何か飲み物を?」と尋ねた。

正直なところ、由佳はこの少しだらしない外見の男が、あの不気味なLINEのアイコンと同じ人物だとは思えなかった。

「カプチーノでいいよ」健二は椅子に寄りかかり、軽く答えた。

由佳はウェイターにカプチーノを頼んだ。

ウェイターが去った後、由佳は健二を見ながら微笑んで、「健二さん、この仕事は何年やっているんですか?」と聞いた。

「もう10年くらいになるかな」

「それは長いですね。主にどんな依頼を受けているんですか?それとも、依頼内容次第ですか?」

健二は少し笑いながら答えた。「依頼内容によるよ。難易度や内容次第で受けるかどうか決める。由佳さんも分かると思うけど、うちに依頼してくるのは、大抵表に出せない仕事が多いからね。万能じゃないから、できることもあれば、できないこともある。できれば、浮気調査ばかりだったら楽なんだけどね」

「でも安心して。僕が一度受けた依頼は、必ず依頼者の利益を最優先にするから。だからもし依頼するなら、信頼してもらうことが大事だ。お互いに隠し事はなしでね」

ちょうどその時、ウェイターが健二のカプチーノを運んできた。「どうぞごゆっくり」

「ありがとう」健二は軽
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