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第393話

実は、この件が漏れてしまったら、最初に危険な目に遭うのは健二ではなく、由佳だった。

由佳が死ねば、彼女はこれ以上調査を続けられなくなる。

弱い女性である由佳でさえ、父の真相を解明するために命の危険を顧みないのだから、なぜ自分が尻込みする必要があるのか、と健二は自問した。

今のネット社会では、どんな情報もすぐに拡散される。しかも、由佳はすでに一定の注目を集めており、さらに山口家族のバックグラウンドがあるため、相手もそう簡単には手を出せないだろう。

健二は深く息を吸い込み、決意した。「由佳、君の依頼を引き受けることに決めたよ」

それが正しい選択かどうかは分からなかった。

ただ、今この瞬間、彼は自分の良心に従ったのだ。

「本当に?」由佳は驚き、目に喜びが浮かんだ。

「本当に。たかしさんの死は当時も非常に残念だった。10年経った今、彼のために何かできることがあるなら、それをやりたいと思う」

「健二さん、ありがとう」由佳は胸が詰まる思いで感謝し、「それなら、健二さん、料金を提示してください」

「一律200万円で」

「分かりました。契約を結びましょう」

健二は常にペンを持ち歩いていた。二人はそれぞれ契約書にサインを書き込んだ。

由佳はペンを置き、契約書の一部を健二に渡した。

「では、話を進めましょう」由佳はバッグから一枚の写真を取り出し、テーブルに置いて健二に差し出した。「まずはこの写真を見てください」

健二は写真を二度ほど見てから、顔を上げて由佳を見つめ、「これは、たかしさんが隠し撮りした犯人の写真なのか?」と推測した。

由佳は頷き、「そうです。この写真は、私が父の遺品を整理していたときに見つけたものです」

健二は写真の端をつまみながら、「どうしてこの写真が父親の死と関係があると思うの?」と質問した。

「実は偶然なんです。少し前に海外旅行から帰国した際、青羽市の空港で、かつて父を轢いたトラック運転手の海斗と彼の友人を見かけたんです。その時、その友人の顔がどこかで見たように感じて、すぐにこの写真を思い出しました」

健二は話を聞きながら分析を始めた。「つまり、今のところたかしさんの死が殺人事件かどうかはただの推測だけ。君は記憶にある外見が似ていると思っているだけで、海斗の友人の正体もまだ確定していないわけだ」

由佳は頷いた。「そうですね。た
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