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第394話

由佳は家に戻り、リビング全体を見渡したが、ちびの姿が見当たらなかった。

テーブルの下を覗き込むと、やはり大きな丸い目がこちらをじっと見つめていた。

由佳は思わず笑ってしまった。

由佳だと分かると、ちびはようやくテーブルの下から出てきて、「ニャー」と鳴いた。

由佳はちびを抱き上げて撫でながら、ソファに座り、片手でスマホを取り出して実家に電話をかけた。

数秒後、電話が繋がり、家政婦の声が聞こえてきた。「もしもし、由佳?」

「おばさん、おばあさんはお家にいますか?」

「いますよ。電話を代わりますね」

家政婦は隣の一人掛けソファに座る清次を一瞥し、おばあさんに電話を渡した。

「由佳?旅行から帰ったのね?海外はどうだった?おばあさんに電話してきたってことは、何か用事でもあるのかしら?」おばあさんは清次に「シーッ」のジェスチャーをしながら話した。

「おばあさん、特に用事はないけど、おばあさんに会いに行こうと思って。でもおばあさんが家にいないかもしれないから、先に電話をしてみたの」

「おばあさんは家にいるから、早くおいで。私もあなたに会いたいわ」

清次はその言葉を聞いて、苦笑いを浮かべた。

電話越しの由佳の声は聞こえなかったが、彼は由佳が何を言っているかを察していた。

由佳が聞きたかったのは、おばあさんが家にいるかどうかではなく、清次が実家にいるかどうかだった。

「ところで、おばあさん、他に誰か家にいるの?」と由佳はほのめかすように尋ねた。

誰を指しているのか、おばあさんはすぐに理解した。

おばあさんは清次を睨みつけ、「誰もいないわ!私と家政婦だけだよ」と断言した。

「分かったわ。すぐに行くね」

由佳は電話を切り、ちびに餌を与え、車に乗って出発した。

実家では、おばあさんが電話を切り、清次をもう一度睨みつけた。「まだここにいるつもり?」

清次は困った顔をして、「おばあさん……」

「そんなこと言っても無駄だよ。由佳を困らせる手助けなんて絶対しないから。後悔するくらいなら、もっと早く気づくべきだったのに」おばあさんはため息をついた。「あなたの祖父と私は、この結婚をまとめるために尽力したのに、こんな結末になるなんて、由佳に顔向けできないわ……」

清次は少しの間黙った後、「おじいさんとおばあさんの期待を裏切ってしまって、本当に申し訳ない……」
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コメント (1)
goodnovel comment avatar
yas
カメラ………旅行前にあったらよかったのに!
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