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第385話

ドアの外から高村の声が聞こえた。「由佳、昼ご飯は自分で作る?それともデリバリーにする?」

由佳は一息ついて水を一口飲み、パソコンを閉じて立ち上がり、ドアを開けた。「どっちでもいいよ」

高村はにやりと笑って、「じゃあデリバリーにしようか」

「うん」

由佳も今は料理をする気にはなれなかった。彼女は高村と一緒に昼ご飯を注文し、ソファに座ってぼんやりしていた。

これほどの力を持つ犯人なら、人質の身元もきっと普通ではないだろう。

自分ひとりでは、もし本気で調べるつもりなら無理だと彼女は思った。

「何考えてるの?そんなに真剣に」高村が尋ねた。

「何でもないよ」由佳は我に返り、微笑んだ。「ねえ高村、虹崎市でプライベート探偵って知ってる?」

「プライベート探偵?何でそんなこと聞くの?」高村は驚いて目を見開いた。「誰を調べようとしてるの?」

由佳は半ば本気、半ば冗談で答えた。「父を轢き殺したトラックの運転手を調べようと思って」

由佳はそれ以上詳しくは言わなかったが、高村は彼女の気持ちが分かった。

当時、山口家の支援や社会からの寄付、たかしの少しの貯金もあって、さらに由佳自身の成績も優秀で奨学金を得ていたため、彼女はお金の心配はしていなかった。ただ、トラック運転手に対して何らかの報いを与えたかったのだ。

トラック運転手は重い判決を受けたが、由佳にとって父の死に比べれば、数年の刑務所生活ではあまりにも軽すぎた。だから彼女が心の中で不満を抱くのも無理はなかった。彼女にとって父は唯一の家族だったのだから。

「そういうことか。でも、プライベート探偵のことはよく知らないな。ちょっと聞いてみようか?」

「ありがとう。でも誰にも話さないでね。誰かに知られると困るから」

「分かってるよ」高村は頷き、「そうだ、総峰が夕食に誘ってくれてるよ。君に伝えた?」

由佳は眉をひそめ、スマホを取り出して確認すると、総峰からのメッセージに気づいた。誘拐事件のニュースを探すことに夢中で、彼女はスマホを確認していなかったのだ。

「具体的な時間は?北田も誘おうか?」

「今夜だよ。北田が暇なのか聞いてみるね」

「分かった」

……

夜の5時、由佳は高村と一緒に約束したレストランへ向かった。

高村は事前に個室を予約していた。

10分ほどして、北田と総峰が次々と到着した。

由佳を見
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