第219話

時には、お金持ちの世界は法律で左右されないことがある。人脈があれば、それだけで事が進むものだ。山口清次が少しでも暗示をすれば、すぐに誰かが手を貸してくれる。停職の理由も至極正当なもので、山口清次自身に影響は及ばない。

周囲の数名の社員たちは互いに目配せをした。

背の高い社員が笑いながら場を和ませようとした。「菊池さん、そんなに気にしないでくださいよ。僕たちには関係ないじゃないですか。稼げればそれでいいんです！」

その時、外でドアベルが鳴った。

「私が出ます」

菊池さんは箸を置いて立ち上がり、ドアを開けた。だが、相手の顔を確認する間もなく、腹に強烈な蹴りを受けた。

不意を突かれた菊池さんは、仰向けに倒れ込み、腹を押さえて苦しそうに息をついた。

ドアの外から現れたのは、坊主頭の若い男だった。一目でわかる、危険な奴だ。

男は素早く菊池さんに近づくと、襟首をつかんで一気に持ち上げた。「立て！」

菊池さんは驚きと恐怖、そして痛みで震えながら、「何をするつもりだ…こんなことをしたら犯罪だぞ！」と叫んだ。

だが、青年はまるで聞こえなかったかのように、菊池さんの頭を壁に叩きつけた。

「ドン！」という音が響き、菊池さんの額に大きなコブができ、目がくらみ、痛みに顔を歪めた。頭がぐらぐらして、意識が遠のきそうだった。

その間に、オフィスでカップ麺を食べていた他の4人の社員も騒ぎに気づいて駆けつけた。状況を見て、全員の顔色が一変した。

「お前は誰だ？」

「どうしていきなり殴るんだ？」

4人が助けに入ろうとしたが、その瞬間、また外から数名の屈強な男たちがなだれ込んできた。

10月の肌寒い夜、社員たちは皆ジャケットを着ていた。

しかし、現れた男たちは半袖で、たくましい腕にはびっしりと刺青が入っていた。明らかに危険な連中だ。

社員たちは初めて見るこの状況に、互いに顔を見合わせ、前に出る勇気を失ってしまった。

「お前ら一体何者だ？何が目的だ？」と背の高い社員が恐怖を隠しきれず、虚勢を張りながら声を荒げた。

彼は片手でスマホを取り出し、110番を押しながら、「早くその人を放せ！お前ら、牢屋に入りたいのか？住居侵入に暴行までやって、ただじゃ済まないぞ！」と脅した。

しかし、通報する間もなく、刺青を入れた男が一歩前に出て、スマホを一蹴