第223話

そのスタッフは、吉村総峰が自分に手を出せないのを見てさらに調子に乗り、好き放題に言い放った。「社長と加波さんが付き合っているのは誰でも知ってる！由佳は恥知らずなんだ、言われて当然だろ！」

吉村総峰の額には怒りで青筋が浮かび、彼を押さえていた数人を振りほどき、スタッフに向かって突進した。止めることはできなかった。

最後に映画の監督が現れて、ようやくこの乱闘は収まった。

山田監督は彼らを個別に休憩室に呼び、事の経緯を聞き出した。

山田監督もネット上のニュースを目にしており、真偽はわからないものの、前回一緒に食事をした際に、吉村総峰が由佳に好意を持っていることは明らかだった。

スタッフが由佳について陰口を叩いていたことを知り、監督はまずスタッフに吉村総峰に謝るよう命じた。

あれほどまでに横柄だったスタッフも、冷静になると状況の深刻さを理解し、今は強がるべきではないことを悟った。吉村総峰のファンがこのことを知れば、一人一人が彼に非難を浴びせ、下手をすれば仕事を失うかもしれない。吉村総峰がどれほど重要かを考えれば、簡単に分かることだった。

スタッフは謝罪し、次に山田監督は吉村総峰にも謝罪を求めた。先に手を出したのは吉村総峰であるからだ。

しかし、吉村総峰は謝罪を拒否した。

確かに先に手を出したのは自分だが、相手の三人が彼を押さえたため、彼も殴られた拳の数は相手と同じくらいだった。

相手が先に過ちを犯したのに、なぜ自分が謝らなければならないのか？

山田監督がさらに説得しようとしたが、吉村総峰は口を開いて言った。「僕が山田監督の顔を潰すつもりはありませんが、由佳は僕の友達です。黙っていたら、僕は男としてのプライドがありません。これ以上言わないでください」

そう言って彼は顔を背け、もう話は聞かないという態度を示した。

山田監督はため息をついた。

彼は吉村総峰を高く評価していた。吉村総峰はこれまで温厚で礼儀正しく、謙虚で勉強熱心だったが、こんなに頑固な一面があるとは思わなかった。

撮影は吉村総峰の負傷により進行が遅れることになった。

副監督は「この映画は本当に波乱万丈だ」と感慨深げに呟いた。

吉村総峰のマネージャーは、外で吉村総峰の仕事を調整していたが、アシスタントからこの事態を聞き、急いで撮影現場に駆けつけた。

だが、すでに手遅れだった。

吉村