第31話

彼の説明の言葉は、まだ言い終わっていなかった。

全身傷だらけの老人が、保镖に外から投げ込まれた。

和彦は彼を知っていた。確か中村龍介と呼ばれていた。

前日、啓司は海外に逃げた夏目家の母子を見つけ、初めて紗枝が嫁ぐ相手が辰夫ではなく彼であることを知った。

それで彼はすぐに老人を捕らえさせた。

しかし、一日一夜の拷問を受けた後でも、老人は紗枝の行方を知らなかった。

啓司は深い井戸のような眼差しで彼を見つめた。

「まだ紗枝と結婚するつもりか？」

老人は全身の傷を抱え、慌てて頭を下げた。

「もうしません、もうしません。二度としません…」

老人は引きずり出された。

どうなるか、考えるまでもなかった。

啓司の顔には何の表情も見られず、視線を和彦に向けた。

「さっきは紗枝のためにわざとあんなことを言ったのか？」

和彦は喉が詰まり、反論しなかった。

「彼女をいつまでも狙う必要はないと思っているんだ」

啓司はペンを握る手をゆっくりと強く握り、筋張った。

「彼女が先に僕を狙ったんだ」

その言葉の後、啓司は立ち上がった。

「和彦、お前は本当に彼女が死んだと思っているのか？」

「悪人栄えて善人滅びるって聞いたことがないか？」

「彼女のような人間は、絶対に死なない！！」

その言葉は、啓司自身を欺くためのもののように聞こえた。

携帯のアラームが鳴り、啓司は時間を確認し、定時に退社し、和彦を一人残して去った。

空っぽのオフィス。

和彦は手に握った玉佩を強く握りしめ、掌から血が出るまで、ようやく手を開いた。

外に出ると、通りに投げ出された龍介が息も絶え絶えになっているのを見て、冷たく命じた。

「連れて帰れ」

…

牡丹別荘。

屋内は特に静かで、リビングの隅に鮮やかな赤い箱が置かれ、特に目立っていた。

啓司は家に定時に戻った時、紗枝がよく座っていたソファに腰掛けていた。

全てが以前と同じであり、同じでなかった。

どれくらいの時間が経ったのかわからないが、彼の視線はその箱に向いた。

これは和彦が送ってきた、紗枝の遺品だったが、まだ開けていなかった。

箱の前に立ち、啓司は身を屈めて箱を開けた。

箱のパスワードは非常に簡単で、彼の誕生日だった。

啓司が知っていた理由は、別荘のパスワードがすべて彼の誕生日だったからだ。

箱の中には日用