第012話

「俺たちは4年間付き合ってきて、お前がいることが当たり前になっていた。誓うよ、本当にお前と別れるつもりはなかったんだ」

私は彼の嘆きを遮った。

「他に用がないなら、私はもう搭乗するよ」

すれ違いざまに、彼は私の袖を引っ張り、嗚咽混じりに言った。

「もしあの日、白川美咲を探しに行かずにお前のそばにいたら、すべてが変わっていたのかな」

彼は答えを求めるように私を見つめ、私はため息をついて言った。

「和也、私たちの間にある問題は白川美咲じゃなく、あなたの揺れ動く心そのものだよ」

「彼女がその日に来られたのは、あなたが彼女に連絡したからだろう？あなたが午後まで出発を遅らせたのも、彼女を待っていたからじゃないの？それに、どうして君が大晦日に私に告白したのか。彼女に対する怒りだったんじゃないの？」

彼の偽りの仮面を剥がしながら、彼の顔がますます青ざめていくのを見て、私は冷たく言った。

「これは全部あなたが自分で招いたことなんだ。この恋愛の中で、あなたは本当に卑劣で最低だった」

彼は私の袖を握りしめたまま、何も言えず、しばらくしてようやくつぶやいた。

「違う、俺はお前を愛してるんだ。あれは全部、自分の気持ちが分からなくて言ったことなんだ......」

私は嫌悪感を覚え、彼の手を振り払った。

「あなたは誰かに捨てられるのを恐れて、あなたを捨てたすべての人を嫌う。でも、同時にその人たちの愛を一番欲しがってる」「だから白川美咲がやってきた時、あなたは迷わず私を捨てたんだ。そして、私があなたを離れようとすると、今度は全力でそれを止めようとする」

「結局のところ、あなたは誰も愛していないんだよ。和也、あなたは本当に心の病を抱えている。精神科に行ったほうがいいよ」

私はスーツケースを引いてその場を去った。後ろから和也が何度も私の名前を呼んだが、振り返ることはなかった。

彼は私を呼んでいたのか、それとも心の奥底に眠っていた自分を呼び覚まそうとしていたのか、私は知らないし、知りたくもなかった。

どれくらいの時間が経ったのだろうか。私はすでに三浦安奈と共に横浜に戻り、国営企業で毎日忙しい社畜生活を送っていた。

ある日、偶然柏木沐飛に会った。彼は私が留学した後に和也が統合失調症と診断されたことを話してくれた。

和也は毎日「柚子と結婚する」と叫んでいたが、「柚子」