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第005話

彼女は、私が考えすぎているのではと心配し、慌てて付け加えた。

「恩返しなんて考えなくていいからね。ただ私がどんな人かを見てくれればいいの。もし専門の介護士さんの方が良ければ、もちろん断ってね」

そう言い終わった後、彼女はまた頭を掻いて焦った様子で続けた。

「いや、別に恩返しのつもりじゃないんだ。ああ、どう言えばいいのか......ただ......」

私は林さんの手をそっと握り返しながら言った。

「私もあなたにお願いしたいけど、あなたの仕事に支障をきたすんじゃないかと心配で......でも、本当に感謝しています、林さん!」

私の人生で最も暗い時に、見知らぬ私を何度も助けてくれるなんて。

トイレに連れて行ってもらった時、私は鏡の中に映った自分の無惨な姿を初めて見た。

後頭部はガーゼでぐるぐる巻きにされ、顔には特に喉の部分に大きなあざがあり、左手は石膏で包まれていた。顔全体はむくんでいて、疲れ果てていた。

「身分証の写真もすごく綺麗だし、ちゃんと治療すれば絶対に元に戻るよ」

林さんは、私が顔の傷を気にしていると思って励ましてくれたが、死の淵から生還した今、私が感じているのはただ生き残ったことへの感謝だけだった。

もう二度と会わないと思っていた人が、思いがけず目の前に現れた。

白川美咲は具合が悪そうに、病気にかかったような顔で和也の側に甘えていた。

和也は微笑みながら彼女をなだめており、美咲も嬉しそうに笑っていた。

「ねえ、見て、あのカップル。すごくラブラブだね」

隣の少女が羨望の声を上げているのを、私は無表情で聞き流していた。心の中はすでに静まり返っていた。

林さんは私の変化に気づかず、車椅子を目立たない角に置いて急いで診察を受けに行った。

白川美咲が何か言ったのか、和也の表情が突然冷たくなり、二人の間で口論が始まった。

美咲が和也の腕を揺らすと、彼は不機嫌そうに携帯電話を取り出した。

すると、画面が割れた私の携帯が鳴り出した。

どうやら、彼女に言われて初めて私のことを思い出したらしい。和也の眉がどんどん不機嫌に歪んでいくのを見て、私は電話に出た。

二人の間に緊張が走り、どちらも言葉を発しなかった。

結局、彼が先に折れ、冷たい声で言った。

「柚子、もういい加減にしろよ?」

私が黙ったままだったので、彼は苛立って立ち上がり、白
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