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第006話

その瞬間、私は複雑な感情に押しつぶされ、彼を見捨てることができなかった。彼が私の両親に次ぐもう一つの家族になるのではないかと思ってしまった。

だから、彼が電話にわざと出なかったと自分から話した時、私は携帯を握りしめた。本当に、男に同情したらひどい目になるんだ。

彼の言葉の裏には、明らかに後ろめたさがあったが、彼はそれを認めたくなくて、全ての過ちを先に私に押し付けようとした。

私がなかなか口を開かないのを見て、彼は突然笑い出した。

「分かったよ。昨日婚姻届を出せなかったから怒ってるんだろう?今度帰ったら美咲をちゃんと紹介するよ。本当に彼女のせいじゃないんだ」

彼は一瞬言葉を止めた。

「それにしても、そんな下手な嘘はやめてくれ。もし本当に殺人犯に出くわしたら、君は逃げられたのか?お前は......」

言い終わらないうちに、館内放送で私の名前が呼ばれた。

「桑柚子さん、2番診察室にお越しください」

彼の慌てた表情を見て、私も思わず笑ってしまった。

その時、林さんが車椅子を押して私を角から連れ出してきた。和也と目が合った瞬間、

彼は突然力を失ったかのように、私の前までよろめきながら走ってきて、しゃがみ込んだ。

「どうして......本当なのか?」

彼が私に触れようとする手を振り払って、私は冷たく答えた。

「死ななかったのが残念だろうね?」

林さんは和也を避けて、私を診察室に連れて行こうとしたが、彼はしつこく車椅子を押さえ込んできた。

「お前......」

私はもう我慢できず、面倒くさそうに頷いて答えた。

「そう、君が愛人を心配して夜の危険を感じている間に、君たちがソファでイチャイチャしている間に、おかげで私は殺人犯に遭遇したんだよ」

「私が助けを求めて電話をかけた時、和也、あなたはなんて言ったんだっけ?」

彼が首を横に振り、震える姿を見ても、私は冷笑を浮かべて続けた。

「あなたはこう言ったよね。『気にするな、そのうち帰ってくるさ』って」

林さんは状況をすぐに察し、ショックを受けていた和也を容赦なく突き飛ばし、私を診察室に連れて行った。

一連の検査が終わった後、病室でそわそわしている和也を見つけた。

白川美咲はまだ彼の隣で泣いていた。

「ごめんね、柚子。こうなったのは私のせいでもあるわ」

彼が何も言わないと、白川美咲は歯を食
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